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「一蘭」丸パクリのラーメン店がタイで大ブーム…パクリのパクリ店まで出現

タイ人客は『一蘭』のパクりであることを知っている?

 店員に聞くと『Aラーメン』がオープンしたのは2年ほど前と言う。それから3店舗を増やし現在では計4店舗を展開している。たった2年で繁盛店にまで上り詰めたのは、オリジナリティなんて最初から捨て、『一蘭』のシステムや味を愚直に真似たおかげに違いない。では彼らはどれほど『一蘭』を真似ているのか。『一蘭』は自身のWebサイト内で「五つの元祖」として以下5つの項目を挙げている。 1.赤い秘伝のタレ 2.臭みのないとんこつスープ 3.味集中カウンター 4.オーダー用紙 5.替玉注文システム  『Aラーメン』は『一蘭』が元祖として掲げるこの5つすべてをお手本にし、極めて似通った店舗を作り上げた。何も臆することなく言ってしまえば「パクっている」という言葉が至極的確だろう。5つのうち3を除く要素は他店でも導入していることなので、『Aラーメン』だけがパクっているとまで言うことはできないが、問題となるパクり要素こそ「味集中カウンター」に他ならない。『一蘭』はこのシステムで特許を取得(特許番号 4267981号)しており、他店で同じシステムを導入すると特許侵害に抵触する可能性が極めて高くなる。
一蘭っぽいラーメン

カウンター席はオーダー用紙や呼び鈴だけではなく飲料水の蛇口まで揃えた完コピっぷり

 ところがこの特許は日本国内の特許法に基づいているため、海外ではそれぞれの国での特許申請が必要になる。ということはタイの『Aラーメン』が「味集中カウンター」をタイ国内で丸パクりしても、タイの法律には一切抵触しないし、日本の法的拘束力が及ぶことももちろんない。つまり、「味集中カウンターを先にやった『Aラーメン』の早い者勝ち」だったというわけだ。  『一蘭』がタイの特許を取得していないのであれば、すでに『Aラーメン』がタイ国内で味集中カウンターの特許を出願、もしくは取得しているのかもしれない。もしこの憶測が事実だとしたら、『一蘭』がタイに進出しても味集中カウンターを持ち込むことは不可能に近いだろう。  徹底的に日本の有名ラーメン店をパクった『Aラーメン』。ではこの店に来店するタイ人客はどのような反応なのだろうか。タイ最大手の掲示板サイト「Pantip(パンティップ)」に掲載されているコメントの一部を抜粋してみた。 「これって日本の有名なラーメン店『一蘭』のシステムでしょ?」 「日本でホンモノの『一蘭』を食べてみたい」 「『一蘭』との違いはどういったところなんでしょうか?」  どうやら多くのタイ人に『一蘭』のパクりであることは知られているようで、日本の有名店をパクっていることが話題の一端になったようだ。『一蘭』のシステムが海を渡りパクり店が出現したのだが、もう一つ驚いたのは『Aラーメン』のヒットを見て、さらにパクったラーメン店まで出てきたことである。

『Aラーメン』をパクった『ラーメンA』

 『Aラーメン』本店の斜め向かいに赤い暖簾を掲げた屋台を発見した。暖簾には「ラーメン」と日本語が書かれている。人気ラーメン店の近くでラーメン屋台を出すとは“喧嘩上等”というわけなのか。『Aラーメン』取材後、この店にも立ち寄ってみた。  暖簾をくぐり、上部に掲げられていた店名を見て驚愕した。アルファベットで書かれているのは『RAMENG A』! タイ語での店名をそのまま読むと「らーめん あ」となる。
一蘭っぽいラーメン

日本の古き良きラーメン屋台を想起させるが、由来はパクり×2の発想

 『ラーメンA』は『Aラーメン』の店名だけではなくとんこつラーメンであることも真似ているのだが、さすがに屋台で「味集中カウンター」までパクることはできず、店名以外はなんてことのないふつうの屋台である。  私はここでもとんこつラーメンをいただいた。ラーメンのレベルは『Aラーメン』に完敗だが、価格は約半分の80バーツ(約272円)。安さで『Aラーメン』に対抗しつつ、『Aラーメン』が満席で入店を諦めた客を狙う「おこぼれ作戦」を実践しているようである。  店員に訊くと『ラーメンA』がオープンしたのは3か月ほど前。この店に来店したことがあるというバンコク在住の日本人女性からの情報提供によると「夕食時間に来店したらほぼ満席だった」と話してくれた。
一蘭っぽいラーメン

このラーメンが80バーツ(約272円)なら十分だろう

 名店『一蘭』をコピーした『Aラーメン』。そしてその店を中途半端にコピーした『ラーメンA』。どちらも繁盛しているという現象は、最先端をひた走るコピー先進国の敏腕ぶりであり、他の追随を許さず世界屈指の存在にまで上り詰めたといっていいだろう。  タイへの進出を狙っている日本食店の方々、日本国内で取得している特許があれば、タイ国内での特許申請を先にしておく方がいいかもしれない。<取材・文/西尾康晴>
2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
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