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トランプ大統領の一般教書演説を読めばアメリカのリアルがわかる

景気回復が政府の役割

 アメリカを偉大な国にしているのが国民の勇気と献身だとすれば、その国民が活躍するために政府がなすべきことは何か。  それは景気回復であり、個々の所得を増やすことだというのがトランプ大統領の信念だ。現にトランプ政権になって景気はかなり良くなってきている。 《選挙以来、我々は240万人の新規雇用を生み出した。製造業だけで20万人に上る。ものすごい数だ。賃金は何年も伸び悩んでいたが、ようやく上昇している。  失業保険の申請件数は45年で最も低い。そのことを私はとても誇りに思う。アフリカ系米国人の失業率は記録のある中で最低だ。ヒスパニック系米国人の失業も史上最低の水準だ。中小企業の景況感は記録的な高水準だ。株式相場は次々と記録を更新し、この短期間で8兆ドル以上増えた》  景気が回復しているのは、トランプ政権の経済政策が適切だからだ。その経済対策の第1が、減税によって個人の可処分所得(手元にあって自由に使えるお金のこと)を増やす政策だ。 《11か月前、この演壇から米国民に約束したように、米国史上最大規模の減税と税制改革を制定した。巨額の減税は中流階層と中小企業に大きな安心感を与える。勤勉な米国人の税率を引き下げるため、全国民の基礎控除をほぼ2倍にした。夫婦世帯で所得2万4000ドルまでは税を全面的に免除される。児童扶養控除も倍にした。所得7万5000ドルの標準的な4人世帯は2000ドルの減税となり、税額は半減する》  こうやって国民が使えるお金を増やすことで個人消費が活発になって飲食店なども潤っていくという経済の好循環を生み出そうとしているのだ。  経済政策の第2は、雇用を生み出している企業に対する減税だ。 《法人税率を35%から21%に引き下げた。これで米国の企業は世界中のどの地のどの企業と競争しても勝てる。これらの変更だけでも平均的な世帯の所得を4000ドル以上引き上げると見積もられる。大きな金額だ。中小企業にとっても巨額の減税となる。これからは事業所得の20%の税額控除を受けることができる》  しかも減税の目的は、雇用の拡大、供与の増加、新規設備投資の促進だ。  これだけ減税をすると、政府の予算は減ることになる。実際に対外援助を大幅に削減したほか、官僚の人件費や事務費、環境や人権の団体への支援なども削っている。そのため官僚たちや環境・人権活動家たちからは極めて評判が悪いのだが、トランプ大統領は臆することなくこう述べる。 《我々米国人は、米国の生活の中心が政府や官僚制度ではなく、信仰と家族だと知っている。我々のモットーは「我ら神を信ず」だ。(中略) 私は今夜、良き労働者たちに報い、そして国民の信頼を損ねたり裏切ったりする連邦政府の職員を排除することができる権限をすべての閣僚に与えるよう、議会に求める》  アメリカ政府は、官僚のためではなく、愛国心と信仰心をもつアメリカ国民のために尽くすべきなのだというのが、トランプ大統領の信念なのだ。  経済政策の第3は、規制緩和だ。  オバマ民主党政権は、環境保護を理由に国内のシェール・ガスや石炭などの開発を妨害してきた。また、多国籍企業が安い人件費を求めて海外に工場を作ることを支援してきた。その結果、国内の製造業は急速にさびれ、雇用は減っていった。そこで、エネルギー産業に対する規制を緩和するとともに、国内に工場を作る企業を支援する仕組みに変更しようとしている。  経済政策の第4は、インフラ投資の拡大だ。  アメリカの地方都市はさびれていて、橋や道路もぼろぼろのところが多い。それは資金不足だけでなく、役所での面倒な手続きが余りにも多く、道路や橋の建設許可を得るために時間がかかり過ぎるからだ。  そこで今後10年間で実に150兆円ものインフラ予算を組むと同時に、道路や橋を作るための役所の手続きを簡素化しようとしている。
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