更新日:2022年12月14日 01:07
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トランプ大統領の一般教書演説を読めばアメリカのリアルがわかる

「中国はライバルだ」と批判

中国 このようにトランプ大統領は、経済を立て直し、国民を豊かにすることで再びアメリカを偉大な国にしようとしている。  では、対外政策はどうしようとしているのか。特徴的なことは、世界の平和を乱しているのは「中国やロシアだ」と名指しで批判したことだ。  民主党のオバマ政権は、中国との「友好」を重視し、南シナ海に中国が軍事基地を作ったり、尖閣諸島を脅かしても事実上、黙認してきた。その一方で同盟国の総理大臣が靖國國神社参拝、つまり自国の戦没者に敬意を表すると批判した。  だが、トランプは同盟国を擁護する一方で、中国の軍事的挑発行動を批判し、連邦議会に対して国防費の増額を支持するよう、こう呼び掛けた。 《世界各地で我々はならず者政権やテロ組織、我々の国益や経済、価値観に挑む中国やロシアなどのライバルと対峙している。こうした恐ろしい脅威に立ち向かうとき、我々が知っているのは、弱さが間違いなく争いを呼び込み、比類なき力こそが本当にすぐれた防衛の最も確実な手段となることだ。私は国防費の危険な強制削減をやめ、我々の偉大な軍隊を十分な財政で支えるよう議会に求めたい》  民主主義国の場合、国民の福祉を優先させる余り、防衛費を増やすことにはどうしても及び腰になりがちだ。しかしトランプは、中国などによる軍事的挑発から、アメリカと同盟国を守るためには、防衛費を増やして防衛力を強化することが重要だと主張したのだ。極めて勇気ある発言だと言えよう。  トランプ大統領が、同盟国の日本に対して防衛費の増額を求めているのも、中国やロシアの脅威が念頭にあるからだ。中国による軍事的挑発を受けている日本としては、トランプ政権の方針を、防衛体制強化に向けた追い風と受け止めるべきであろう。  アメリカの大統領を、われわれ日本人が選べるわけではない。とするならば、トランプ大統領の言動を批判してもいいが同時に、トランプ政権をしたたかに活用する賢さも持ちたいものである。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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