SKYLARKがアニソンをやる理由
『マジンガーZ』の主題歌を聴くエッディ(筆者撮影)
山野「それにしても、SKYLARKはなぜアニソンをやっていたのですか?」
エッディ「私が5~6歳頃の子どものとき、ヨーロッパに日本のアニメが輸入されて、すぐにロボットアニメが人気になりました。毎週末、早い時間に起きて『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『グレンダイザー』『鋼鉄ジーグ』などのGO NAGAI(永井豪)のロボットアニメを観ていました」
山野「エッディさんは今、何歳ですか?」
エッディ「46歳になりました」
山野「僕も今46歳です。じゃあ、同じ世代ですね」
エッディ「イタリアでの最初の放送時は、日本のアニメは有名ではなく、放送のためのお金があまりなくて、日本語のオリジナル楽曲をそのまま使っていました。例えば『飛べ! グレンダイザー』など。その後、人気が上がってからは、例えば『鋼鉄ジーグ』など、日本語の代わりにイタリア語の歌詞を使うようになりました。そして80年代中頃になると、原曲の代わりにまったく新しいイタリアヴァージョンの曲を使い始めました。私は、最初のオリジナル楽曲のメロディやスタイルが好きです」
山野「SKYLARKでご自身の作る楽曲に、アニソンの影響はあると思いますか?」
エッディ「そうですね、SKYLARKの私の楽曲のメロディには、ちょっと日本のアニメの感じに似ているところはあると思います。クラシックやメタル、プログレッシヴロック、アニメなど、全部入っているのがSKYLARK、 エッディの楽曲と言えます」
山野「GO NAGAI以外のアニメは何が好きですか? 例えば、『ガンダム』とか」
エッディ「『ガンダム』はあまり観ませんでした。だけど私の友だちが好きです。私は好きなアニメがたくさんあります。『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』『キャプテン翼』…、それと、『キャンディ❤キャンディ』は可愛い!」
山野(笑)
エッディ「他にもいろいろあるけど、日本でのタイトルがわからない。日本のアニメがイタリアで放送される際は、タイトルが変わることが多いんです。『キャプテン翼』は、イタリアでのタイトルも、選手名も全然違います。さらに、ストーリーも改変されていることも多いです」
※イタリア版タイトルは、『Holly e Benji(オーリーとベンジー)』。オーリーが大空翼で、ベンジーが若林源三
エッディ「あと胸にライオンがある大きなロボット……『ダルタ二アス』」
山野「『エヴァンゲリオン』はいかがですか?」
エッディ「ああ、『エヴァンゲリオン』も好きです。だけど、新しいイメージがあります。私の世代じゃない」
山野「イタリアでは、たくさん日本のアニメやっているんですね」
エッディ「今もたくさん放送されています。多くの子どもが観ている。だけど、やっぱりGO NAGAIのロボットアニメです。私は『マジンガーZ』『グレートマジンガー』などのDVDを持っていて、ときどき観ます」
日本のポップカルチャーが海外で受けているという話題では、まずはフランスがあげられる。しかし、ヘヴィメタル・シーンでは、フランスのバンドはほとんど知られていない。ANOREXIA NERVOSAとFAIRYLAND、そしてHEAVENLYくらいで、ここ日本で知られたのは2000年頃である。その側面から考えても、イタリアのヘヴィメタル・バンドの多くがアニソンカヴァーをやっていることは、やはり特筆すべきことなのだ。
しかしそれらの事実およびその社会的・文化的な意義については、アニメ系メディアでは当然として、メタル系メディアですらもあまり論じられていない。非常に残念なことと言わざるを得ない。日本とイタリアの友好関係のためにも、イタリアが、アニソンメタルの産地であり、日本のポップカルチャーの海外進出に非常に貢献している親日国であることを、ちゃんと知っておきたい。
(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は
『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)