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「改憲ごっこ」は安倍政権の“信者”たちが勝手にやっていればいい<倉山満>

倉山満の言論ストロングスタイル

8月26日、自民党総裁選への出馬を表明する安倍晋三首相。「日本を取り戻す」と述べた安倍氏だが、消費増税をして、日本の何を取り戻すのだろうか?(写真/時事通信社)

「改憲ごっこ」など、安倍政権の「信者」たちが勝手にやっていればいい

 この世の中に「信者」ほど度し難い者はなし。安倍内閣は来年の消費増税を閣議決定し、実務では全国的に軽減税率の手続きが進んでいる旨を指摘した。  それに対して、「安倍首相はギリギリまで悩んで、過去2回、消費増税を延期した。来年もそうするはずだ」と主張する人がいる。こういう主張をする人を「信者」と呼ぶ。  前回、景気回復の中核であるインフレターゲット(インタゲ)について述べた。デフレとは商品に対し通貨が不足している状態である。だから、デフレを脱却するには、お札を刷るのが唯一最善の方法だ。これにインタゲを掲げると、景気が回復するまでお札を刷り続けるのだというメッセージを市場に送ることになり、消費意欲が刺激される。人は経済が順調で将来設計が安心できるから、お金を使うのだ。  ところが、安倍首相は「来年10月1日に消費税を絶対に増税する」と再三再四言い切っている。総理大臣が増税を断言し、政府が着々と準備をすること自体が、インタゲの効果を破壊するのだ。だから、6年も総理大臣をやっていて、景気が回復していない。  百歩譲って安倍首相が増税延期をしたとしよう。それでも、その日までは安倍首相は指弾されてしかるべきなのだ。総理大臣自ら、「景気を悪くする」と宣言しているようなものだからだ。  ところが「信者」は、そう考えない。安倍首相は政権復帰当初、「まず経済。最後に憲法改正をやり遂げる」と公約していたが、8%消費増税以後、ちぐはぐになっている。景気が回復しきれないうちに改憲に乗り出そうとしている。  昭和16年、心ある人は「支那事変も片付かないのにアメリカを相手に戦争を仕掛けるなんて、大本営のお偉いさんには、どんな秘策があるのか」と訝ったが、実際には何もなかった。その結果、日本人は地獄を見た。その筆法でいけば、「景気回復もしないのに憲法改正なんて、安倍内閣のお偉いさんには、どんな秘策があるのか」と訝りたくなる。  安倍内閣が潰れようが、憲法改正が挫折しようが知ったことではないが、この程度の中途半端な景気回復すら失われて不況に逆戻りするのはご免だ。「改憲ごっこ」など、安倍政権の「信者」たちが勝手にやっていればいい。  断っておくが、私は日本国憲法など日本人が存在そのものを忘れるまで徹底的に粉砕すべきだと考える。しかし、今の安倍首相が進めようとしている憲法改正には反対だ。
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安倍自民党改憲案は憲法が何なのかをわかっていない
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