更新日:2019年08月01日 22:54
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石破派の山下大臣だけが唯一、安倍首相が選んだ人事。なぜか?――倉山満

 なお、参議院からは、3人が入閣した。組閣前に既に、竹下派の吉田博美参議院会長の留任は決定していた。形式的なトップは橋本聖子参議院自民党会長だが、本人も含めて誰も信じまい。誰がどう見ても、参議院自民党を仕切るのは、吉田氏だ。  吉田氏個人は安倍首相と仲が良いらしいが、今回の総裁選では、いまだに参議院竹下派に影響力を持つ青木幹雄氏の命令で石破茂氏支持に回り、安倍首相の心胆を寒からしめた。  参議院自民党は2人の閣僚を推薦するのが慣例だが、今回も吉田氏のメンツを尊重したように見える。

石破派の山下大臣だけは、唯一、安倍首相が選んだ人事だ。なぜか?

 さて、読者諸氏はマスコミが「安倍首相は石破派を干し上げるか」と報道したので、関心がそこに向いたかもしれない。結果を見れば、簡単。干し上げる余裕がなかった。麻生・二階の主流派を優遇し、自分の出身派閥の細田派に見返りを与え、大派閥の岸田派に気を使い、竹下派でも自分に忠誠を誓った人間には報い……とやっていたら、ポストがなくなってしまった。  哀れなのが石原派で、組閣で2回連続ゼロ! 小派閥のくせに安倍首相支持が最も遅かったのだから、自業自得である。  ただ、石破派の山下貴司法務大臣だけは、唯一、安倍首相が選んだ人事だ。なぜか?  閣僚名簿というのは、ほとんどの人選は誰でも予想できる。自民党議員を派閥別に分け、さらに当選回数順に並べてみる。衆議院だと5回を超えたら入閣適齢期とされる。参議院は2~3回。昔の自民党は「衆議院で7回当選すれば、ハマコー以外誰でも大臣にしてあげる」という優しさと思いやりにあふれた政党だったが、最近は色々な事情で何回当選しても大臣になれない可哀そうな人が増えてしまった。  今回は初入閣が多かったが、伴食大臣と長官級で「在庫一掃」した感がある。ということは、この内閣は長くないというのが永田町の常識で、仮に来年の参議院選挙後も安倍内閣が続投しても、直後に内閣改造があるのだ。  石破派を見ると、当選7、6、5回に未入閣の議員がいる。その人たちを飛ばして、山下法相は当選3回で入閣した。仰天した。  しばしば聞かれる質問が、「小泉進次郎より若い政治家で、期待ができる人はいますか」だった。実は、サイン会のトークショーなど、広まらない場所では2人の名前をあげていたが、その1人が山下氏だったからだ(もう1人の名は知人なので、まだ伏せる)。  山下氏とは一面識もない。しかし、信頼できる共通の知り合いのすべてが、山下氏をベタ褒めしているので注目していた。その理由は、「自民党では珍しく、経済と憲法の両方がわかる!」である。  年齢は進次郎氏より上だが、当選回数は1期若い。検事出身で、多くの地道な政策に取り組み、議員立法8本という実績がある。さっそく、どこぞの週刊誌が言いがかりをつけていたが、永田町は嫉妬の海。将来が心配になる。こんな内閣に入って。  安倍首相も、評判のいい山下氏に目をつけていたのだろうが、表向きは1ポストを用意しつつ、石破派に嫌がらせをしたのだろう。  さて、安倍首相は、消費増税10%と憲法9条改正を掲げて総裁選を戦った。どうやら憲法改正は本気らしい。  ならば、なぜ「憲法担当大臣」を置かないのか。今の日本国憲法を改正する際に、臨時で置かれたポストだ。  非議員ながら自民党副総裁を務めていた高村正彦氏辺りがあるかと思ったが、高村氏は副総裁も辞めた。ならばいっそ、横畠祐介内閣法制局長官に兼務させたらどうか。  どうせ法制局の言いなりの改憲案なのだから。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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