ニュース

新天皇が即位する前に、新元号を発表してしまう安倍政権の大問題/倉山満

 昭和から平成への改元も、そうだった。昭和最後の1年間、先帝陛下は重病に苦しまれ、いつ「その日」が来るかと日本中が心配した。そして昭和64年1月7日に崩御。同日、今上陛下が践祚(せんそ。天皇の位を受け継ぐこと)され、同日に政府が発表、翌日から施行された。  もちろん政府は事前に新元号を用意していたのだが、公表は新帝践祚の後だった。時の竹下登内閣は、人としての道理を知っていたからだ。  一世一元の制の現代において、元号はそのまま天皇の贈り名となる。お亡くなりになられた後に贈られるから、贈り名である。天皇陛下は存命中、「今上天皇」としか呼ばれない。昭和天皇、大正天皇と名前で呼ばれるのは崩御の後である。世の中には日本人としての素養がない人がいて、公共の場で「平成天皇」を連呼する御仁がいるが、「勝手に殺すな!」と言う他ない。  改元大権を持ち出すまでもなく、新しい元号は新帝の元号なのである。だから、新帝が位に就かれた後にしか、公表してはならないのである。  竹下登と言えば「中国に日本を売り飛ばした政治家」としか言いようがないが、それでも日本人として最低限の尊皇の心はあった。  では、安倍晋三は? その背後に隠れている役人たちは?  現在の元号法を読めば、新帝践祚(正確には、現行法では即位)の前に新元号は公表できない。  ところが、安倍内閣は「事前公表」に拘っている。中心人物は杉田和博官房副長官だと報じられている。警察出身で内閣人事局長を兼ね、官僚機構全体に睨みを利かす実力者と評判だ。だが、安倍だの杉田だの、小物はどうでもいい。安倍や杉田を走狗にする政府の黒幕こそ、問題だ。どんな理屈だか知らないが、政府は事前に公表しても違法ではないとの解釈に立脚しているようである。  どうしても事前公表したいのなら、現行法を改正するなり、いっそ一世一元の制を廃止してからにすればいい。時間などいくらでもあった。それをあえて選挙で選ばれた国会議員による立法ではなく、政府の官僚による解釈で行おうとする。  その意図は明々白々だ。一つ、真の立法権は国会議員ではなく官僚にあると知らしめること。一つ、天皇の元号ではなく、政府の元号であると見せつけること。要するに、法の解釈を握るものは、政治家よりも、そして天皇よりも偉いのだと、権威を見せつけようとしているのだ。  では、解釈を握る政府の官僚とは誰か。天皇ロボット説の総本山、内閣法制局である。その長官は横畠裕介。この男、自分は天皇を超える「法王」とでも思っているのか。  だが、国民は皇室を蔑ろにするものを見逃しはしない。賢明な国民は、黒幕が誰かを知っている。  安倍内閣よ、逆賊となるなかれ。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

噓だらけの日本古代史噓だらけの日本古代史

ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く!

1
2
13歳からの「くにまもり」

あなたが総理大臣だったら何をしますか?


嘘だらけの日独近現代史

世界大戦に二度も負けたのに、なぜドイツは立ち直れたのか?

テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート