更新日:2020年09月10日 15:52
エンタメ

AVの帝王・村西とおるが語る「社長令嬢で横国女子大生の黒木香がAV女優デビューした理由」

女性上位のセックスを体現した

――そんな革命的なAVが、いわば“偶然”生まれたんですね。 村西:『SMぽいの好き』はAV業界にとどまらず、日本人のセックスのありようを変えました。それまではピンク映画にしても日活ロマンポルノにしても、痴漢、強姦、レイプなど、主に女性側が受け身で映像表現、セックス表現をしてきたんです。 でも『SMぽいの好き』は、何者にも束縛されない女性の性というものを抉った初めての作品なんです。作られたキャラクターではなく、素の女性のセックスというものをお見せした。 その結果、「現代を生きる女性は、これほどまでに奥深くてパワフルなのか」と多くの人が刮目した訳です。女性が男の上にまたがって、腰を狂ったように振り乱して、なおかつ普段は言ってはいけないことを口にしてしまってもいいんだと。特に女性たちから支持をされたんです。 ――黒木さんが国立大学の現役女子大生というのも耳目を集める大きな要素ですよね。 村西:おっしゃるとおりです。黒木さんの奔放さというか、男に自分の性を所有されないで、あくまで自分自身でコントロールして楽しむという、自立した女性の性を証明した。それまで女性の解放運動をしてきたフェミニストの方々でも崩すことのできなかった壁を、黒木さんは1発で崩したんです。 ――『SMぽいの好き』の翌月に、村西監督・黒木さんのタッグによる2作目『愛虐の宴』を発売しますが、これっきり黒木さんの主演作を撮らなかったのはなぜですか? 村西:やるだけのことをやっちゃったからね。私にとってみれば2、3本撮っちゃえば出尽くしちゃうから、それ以上やってもしょうがないなと思ったんですよ。 今は1000本以上とか出るAV女優の方もいますでしょう? でも私の中では、てめえの女房でもあるまいし、そんなに出てどうするんだというような感覚があるんですよね。 そういう意味でも、商売目的で駄作を出し続けることは、黒木さんの名誉にも関わることです。『SMぽいの好き』という奇跡のような作品が生まれて、これ以上のことはできないんだから宝物にしていこうと。そうやって一期一会のセックスを切り取れたのが良かったんでしょうね。 <取材・文/猪口貴裕 撮影/石川真魚>
出版社勤務を経て、フリーの編集・ライターに。雑誌・WEB媒体で、映画・ドラマ・音楽・声優・お笑いなどのインタビュー記事を中心に執筆。芸能・エンタメ系のサイトやアイドル誌の編集も務める。
1
2
3
(情報)
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』
総監督:武正晴
監督:河合勇人、内田英治
出演:
山田孝之 満島真之介 森田望智 柄本時生 伊藤沙莉 冨手麻妙 後藤剛範
吉田鋼太郎 板尾創路 余 貴美子 / 小雪 國村隼 /
玉山鉄二 リリー・フランキー 石橋凌
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)
配信:2019年Netflixにて全世界独占配信
おすすめ記事