更新日:2023年03月21日 16:09
ライフ

ボッタクリ風俗で遭遇した、「天変地異」――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第42話>

ボッタクリ風俗の謎メニュー。「歌う」「躍る」「焼肉」、そして……

 全然写真と違う。なんか政治犯みたいな女が立っている。なんなんだこいつ。早く写真の女を出せよ、と思ったがどうやらこれが写真の女らしい。  この革命軍の女がすごくて、カーテンを開けて入ってくるや否や、ドスンと椅子に座って堂々としたものですよ。僕なんか、例えばめちゃくちゃイケメンの写真で釣った女の子がいて、そこに僕が大登場、そうなったら明らかに落胆している女の子を見て、申し訳なかったな、と思うんですけど、彼女は非常に堂々としたものですよ。全く引け目を感じていない。その胆力をちょっと分けて欲しい。  で、その革命軍の女が言う。なぜか魅惑的に足を組み替えながら言う。  「おにいさん、ここがどこだかわかってる?」  ん? 革命軍のアジトかな? と思ったのですが、言わないでいると、さらに女が続けます。  「ここボッタクリだよ」  そう言ってニヤリと笑う。  「残念だったわね、今からぼったくられるよ。逃げられないよ、入口に店員いるから」  そんな感じのことをとても得意気に言う。  この革命軍、なんで自分の手の内を全てばらしているのか分からないのですが、めちゃくちゃしてやったりみたいな、革命前夜みたいな顔して言うんですよ。  なんでも、このボッタクリ店は今日から稼働を始めたらしく、これからバリバリとぼったくっていくぞーという熱い魂を込めてサービス開始したそうで、けっこうテンションが上がっている様子。そして嬉しそうにこのボッタクリのシステムがいかに優れているか説明し始めました。  「これが料金表」  そういって渡されたA3くらいの大きさの紙には、ビッシリと細かな文字が書いてありました。  「お話 1000P」  どうやらメニュー表のようで、こまごまと様々な料金が記入されていました。  これはいわゆる「タケノコ剥ぎ」と呼ばれるボッタクリで、法外な料金を請求するタイプのものになります。ドンと法外な料金を請求するのではなく、やれ、これをするにはいくら、やれこれをするにはいくら、とあらゆることに料金が加算されていき、その様がタケノコの皮を剥ぐ工程みたいだからそう呼ばれているらしい。 「上半身脱衣 3000P」 「手を握る 5000P」 「髪を撫でる8000P」 「キス 40000P」  どうやらキスが最上位のようで、40000Pという強気の設定。Pが何を示すのか全く分かりませんが、とにかく過ごそう。ただ、どうして「髪を撫でる」のポイントがこんなに高いのか全く理解できません。上半身裸より重きを置いている理由が知りたい。  その他にも謎のメニューがあって「歌う 15000P」「躍る 20000P」「焼肉 30000P」と、ぞれぞれ意味は分かるんですけど、ここに載っている意味が分からないものが多数。挙句の果てには本当に意味が分からないメニューがあって、  「天変地異 35000P」  これ選んだら何が起こるんだろうという期待感しかありません。ほんと、何が起こるんだ。選んだ瞬間にビルが崩壊する仕掛けとかあるのだろうか。しかもP的にはキスが40000Pですから、天変地異より重いキス。完全に天変地異キスです。なにがどうなってしまうんだ。
次のページ right-delta
水商売の影はないほうがいい
1
2
3
4
5
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


記事一覧へ
pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

おすすめ記事