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ボッタクリ風俗で遭遇した、「天変地異」――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第42話>

階段のない5階建てのビルの頂上で、その女は待っていた

 「今日できたばかりの店なんですけど」  田舎から出てきたばかりで、東京の雑踏、天を貫かんばかりに、森のように林立するビル群に恐れおののいていると、そう話しかけられた。まだ僕は血気盛んな20代の頃だ。声の方角を見ると、明らかに怪しげなジャージ姿の男がニコニコと笑ってこちらを見ていた。  「こういういい子がいるんですよ」  すぐに近づいてきて、肩を抱きこむようにして僕を引き寄せると、手の平に隠し持っていた証明写真みたいなサイズの写真を見せてきた。  なるほど、かわいい娘だ、とても都会的な娘だ。何かが洗練されている。田舎者だった僕はドキドキした。  「最後まで、6000円ぽっきり!」  うっそ! と思った。こんなかわいい娘に相手してもらって最後までで6000円。完全に価格破壊が起こっている。東京はすごいんだな、田舎者には想像つかない世界がある、そう思った。  考える間もなく男についていくことにした。  怪しげな男に案内された先は、これまた怪しげな雑居ビルがあった。何年も掃除されていないであろう小汚いエントランスに、潰れた飲み屋のものと思われる壊れた看板、なぜか銀色の郵便受けの上にはなめ猫のブロマイドが置かれていた。  さらに怪しげな階段をちょっと上ると、今にも朽ち果てそうなエレベーターが出てくる。ドアとか塗装がめちゃくちゃ剥げてる。  「あ、うちの店、エレベーター使えないんで、階段っす」  怪しげな男はそう言った。なぜ使えないのかは分からないけど、そう言って、壊れた傘が狂ったように放置されている汚い階段を昇っていく。  「何階なの?」  不安になってそう尋ねた。  「五階っす」  サラッとむちゃくちゃなこと言いやがる。  なんとか五階に到着し、緑色の扉をくぐる。ここで怪しげな男とは別れたのだけど、扉の先には徹底的に暴力を覚えこませたピンポン球、みたいな男が立っていた。そのピンポン球に言われるまま6000円払い、真っ暗な部屋の奥へと案内された。  カーテンで仕切られた奥の間には動物の死体を置くみたいな台がポツンとあって、その脇に安っぽい木の椅子が2つ置かれていた。なぜか店内にはうっすらとラジオからの野球中継が流れていた。  そこで待っていると、シャッと小気味よい音を立てて誰かがやってきた。  ついにあの写真の娘が来た! エロいことが始まる!  あまりの怪しさにマゴマゴしていた僕も、喜び勇んでカーテンの方向を見た。  革命軍のリーダーみたいな女が立っていた。
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ボッタクリ風俗の謎メニュー。「歌う」「躍る」「焼肉」、そして……
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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