更新日:2019年08月21日 17:17
お金

「メルカリは赤字でヤバい」は本当か?/馬渕磨理子

「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子 です。  私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。  本企画では、そんなリサーチャーである私馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

メルカリのホームページ

「メルカリは赤字でヤバい!」は本当か?

 今回取り上げるのは、フリマアプリでおなじみのメルカリ(4385)の財務分析です。  同社が現在展開している事業は、国内メルカリ、米国メルカリ、そしてメルペイの3つ。国内メルカリはすでに利益を生み出す事業となっている一方、米国メルカリはアプリ取引額が小さく、利益を生み出す事業にはなっていません。そのため株価推移も冴えない見通しにはなります。ただ、本当に「メルカリは冴えない赤字ベンチャー」なのでしょうか。  結論を急げば、それは間違いです。その理由を、メルカリの財務諸表に注目して3分ほどで説明していきましょう。

なんで赤字?答えはテレビCMにあった

 そもそも、“ユニコーン企業”(企業価値が10億円以上ある企業のこと)として上場を果たしたメルカリの株価が、いまなぜ下がりつづけているのかご存知でしょうか。その答えを知る方法として、同社の損益計算書(略して“PL”=profit and loss statement)を見てみましょう。
メルカリPL分析

売上高は毎年順調に増加(図表1の濃いブルー)、営業損失は拡大(水色)、「販管費」が増加(イエロー)している

 PLは、簡単に言えば企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。メルカリのPLを見ると、売上高は毎年順調に増加していますが、営業損失は拡大していることがわかります。  つまり、販管費にあたる部分費用が売上高の90%以上を占めており、利益を圧迫しています。背景には、直近1年間に中古品リユース市場の競合の動きが激しくなっていることが挙げれます。  そこで、メルカリは事業の選択と集中の判断を行っています。撤退の選択をしたことで、今後は費用の圧縮が見込めます。具体的に撤退事業は、自転車シェアリングの「メルチャリ」、旅行のブログなどをシェアする「メルトリップ」、個人のスキルシェア「teacha(ティーチャ)」です。  そして、今後、集中していく事業は日米のメルカリとメルペイです。具体的に数字で振り返ってみると、下記のようになります。 2017年6月期:売上高220億円、営業損失27億円(上場前) 2018年6月期:売上高347億円、営業損失44億円 2019年6月期:売上高510億円、営業損失は非開示(予想)※直近の第3四半期は59億円  つまり、営業損失は拡大しているように見えます。さて、その原因は何なのか。  答えはシンプル。「販管費」の増加が原因です。この「販管費」とはいったい何のことでしょうか。その中身を見てみると…。  338億円の「販管費」のうち、約49%の168億円が「広告宣伝費」となっています。「広告宣伝費」は、文字通りテレビCMや雑誌や街頭看板にかける広告費のこと。これは、今のメルカリがマーケティング施策として、「攻めの姿勢」を取っていることを意味します。  この点を見逃して、メルカリの赤字の部分だけを見るのはもったいないです。というのも、「販管費」は抑えようと思えばすぐに抑えられる項目。ピタリとテレビCMをやめればよいだけの話ですから。  それより、見落としてはいけない事実があります。  メルカリは現在、営業利益が黒字化する時期、4~5年先にはグループ営業利益が数億円に、また株式時価総額も1兆円レベルに膨らむ可能性もあると言われています。そのため今の「販管費」にかけるコストが“意味のある投資”であると捉えたほうが正しいのです。
次のページ right-delta
実はポテンシャルが高いメルカリ
1
2
3
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

記事一覧へ
おすすめ記事