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「営業成績」が賭けの対象。職場で“野良賭博”に興じる営業マンたちの日常

年間100万~200万円が賭けの対価として消える

 賭けに負けた場合は賭け参加者の飲み会の代金を奢ることが多く、もともと飲み会が非常に多い職場ということもあり、年間100万~200万円という単位のお金が賭けの対価として、職場の飲み会で消えたそうだ。 野良賭博「たとえば、私のチームに後輩が2人、私の同期のチームにも後輩が2人のときに、私と同期で自分たちの後輩の中で誰が勝つかを予想します。ハズしたほうの奢りで全員で飲みにいくみたいな感じです。それだと計6人の飲み代なので、1人でだいたい3万円くらいの負担。現金を直接渡すこともありましたけど、その場合は相手チームの飲み代として1万~2万円とか。先輩社員が奢るのも当たり前だったので、自分が勝って現金もらったときはちゃんと部下との飲み代に回しました」

最も盛り上がるのは「新卒が配属される季節」

 一回の賭けに参加するメンバーは平均5~6人程度。しかし、新卒が入ってくる季節は特に盛り上がることが多く、20人近い社員が参加することもあったという。 「新卒は社内でも一番の注目の的で実力が未知数だから『顔がカワイイからこいつ』とか『あいつはなんか話がうまいから』とか、みんなであーだこーだ言って盛り上がりました。本人たちにも賭けのことは伝えているから、自分の部下たちに賭けて『ぜってぇ勝てよ』『あいつに負けたらどうなるかわかってんだろうな』みたいに発破かけたり…インセンティブもそうですけど、営業成績を達成することに対するゲーム感覚がすごく強い会社だったんでしたね」  まったくとんでもない職場だが、常に営業成績に対する強いプレッシャーと戦わざるえなかったその職場のメンバーにとっては「ストレス発散のための最適の娯楽だった」と玉井さんは振り返る。 「当時は社員の平均年齢も20代後半とか若くて、いかにもベンチャーっぽい雰囲気でしたけど、今はもうさすがにやっていないと思いますね。その後、上場もしているのでずいぶんと“ホワイト化”しました」  賭博は金額の多寡にかかわらず、許さない違法行為。玉井さんはどこか懐かしさを滲ませるが、社風の変化とともに姿を消したのは必然だったのかもしれない。
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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