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「障害を笑いに変えたい」元ストリッパーとのコンビで目指す新喜劇

一発芸「生まれつき障がいがあって斬新な歩き方をしております」


――コンビでは、どういうネタをしているのでしょうか? 鈴本 主に漫才です。障がいを弄るネタも、そうでないネタも両方やっています。最初の挨拶は、「脚の障がいと更年期障害でやっておりますけども~」みたいな感じで(笑)。ピンでやっていたときは自虐ネタも多くて、「みなさん足元気を付けて帰ってくださいね、私も気を付けまーす!」と挨拶すると、お客さんが引いてしまうことがある。  私としては観客の皆様が気を遣わなくていいように、面白く明るくできたらいいなとは思っているんですけど、なかなかサジ加減が難しいですね。 ――障害を笑いにかえるのは、たしかに難しそうです。 鈴本 NSC在学中は障害を扱うネタを一切やっていなかったんですけど、卒業してから先輩方が“あえて”弄ってくれるんですよ。「これもお前の武器だぞ」と言ってくれていることに気づいて、障害を笑いに変えようと思えました。私の偏見かもしれませんが、世間の皆様は「車椅子に乗ってからが障害」と思ってらっしゃる人が多い。  それに比べたら、私の障害は軽い方で、出してはいけない!と勝手に思い込んでいました。でも今は違います。ネタの最初に自己紹介を入れるときもあり、「生まれつき障害があって斬新な歩き方をしております」……みたいな(笑)。 ――舞台はバリアフリー化が進んではいますが、まだ出演する際に苦労する点はありますか? 鈴本 以前、劇場で出番が“たった1分”の時期がありました。この脚なので、出ていって捌けるだけで30秒くらいかかってしまい、ネタがほとんどできず……。でも、逆にそれをネタにしたこともありましたね(笑)。あとはオーディションに受かりづらいのはあります。NSC卒業後に新喜劇の募集があって、ぜひ挑戦したかったのですが、マネージャーさんから「体力的に普通の人でもとても大変なので、厳しいと思います」と応募すらできせんでした。当時は応募ぐらいさせてよ!と思いましたが、今はもっと詳しく障害の程度を説明したり、やりたい気持ちを伝えればよかったなと反省しています。  前説の仕事を頂いたときも、「脚の悪い芸人を舞台に出して大丈夫なのか?」という声がありました。でも、会社側がしっかり説明してくれて、そして私の気持ちを組んでくださって出られることに。障害がハンデになってしまうのも、私の知名度がないのもあると思います。  例えば乙武洋匡さんには余程のことがない限りストップはかからないと思うんです。乙武さんはもちろん仕事人として超一流。障害の度合いも人それぞれありますが、私も心配や気遣いが吹き飛ぶくらい、ちゃんと面白くなって結果を残して知ってもらえるようにならなきゃなと思います。まず芸を磨くことが大問題ですけどね(笑)。

2人でYouTubeを始めようか

――コロナ以降、舞台にどんな影響が出ていますか? 鈴本 私が主戦場にする「ヨシモト∞ホール」でも講演再開しましたが、またいつ休業するかわからない状況ではありますね。(※)コロナにより前よりチケットノルマは弛くなったので、そこは助かりました。でも芸人としての収入はほとんどないので、コールセンターでアルバイトをしています。(※編集部注:1/12(火)~1/31(日)の間、一部の公演を中止している)  コロナが流行り始めた頃にコールセンターが時短営業になってしまって、いつもは夜9時まで働いていたのが6時までになってしまい収入が激減。本当にお金がないときは小麦粉でホットケーキの味がないやつみたいなのを作って食べたりしていました。美味しくはないけど腹持ちがいいんですよ(笑)。  相方の子輝ちゃんとはYouTube始めてみようか、みたいな話をちょうどしていました。お母さんみたいに心配してくれるので、すごく助かっています。以前、子輝ちゃんがお弁当屋さんで働いていたときは会うときにおにぎりを買ってきてくれたりもして。19歳差なので娘みたいに思ってくれているのかな。かわいがってもらっています(笑)。 ――では、最後に今後の目標はありますか? 鈴木 子輝ちゃんも言ってたんですけど、2人で新喜劇に出たい。あとはコンビで少しでも長く続けたいです。私より全然年上の子輝ちゃんがいつも元気でいてくれるので、それに励まされています。ちょうど更年期障害が落ち着きつつあって、体力的にも元気みたいです(笑)。組んでくれて、本当にありがとうと思っています。これ言っとくと、またおにぎり買ってきてくれると思うので(笑)。でも、本心です。  お笑いへの情熱、新喜劇への憧れ、そして何より相方の子輝さんを大事に想う気持ちが十二分に伝わってくるインタビューだった。劇場が再開し、再び舞台に立てるようになったちえさんと子輝さん。彼女たちが全力でお笑いをやっている姿を今度観に行こうと思った。 〈取材・文/ふじこ〉
’88年生まれの兼業ライター。バラエティ番組やライブ、サブカルイベントに至るまでチェックする大のお笑い好き。お笑い本やサブカル本の書評も手掛ける傍ら、AVライターとしても活動中。ツイッターアカウントは@245pro
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