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安倍長期政権を思い出せ。政権維持の最大基盤は日銀人事の勝利がすべてだ/倉山満

時の政権が財務省と戦ってでも、本気で景気回復に取り組む時、黒田総裁は金融緩和で呼応する

 そうした中、前安倍政権は徐々にリフレ派を増やし、3人を送り込んだ。若田部副総裁の他、片岡剛士・安達誠司の両委員である。  現在は消費増税の悪影響があるので、金融緩和の効果は減殺されている。だが、このコロナ禍で金融緩和を止めればリーマンショック以上の悲惨さになるのは目に見えている。つまり、打つ手がない中で持ちこたえている状況だ。  そこで、明るい兆しだ。もちろんコロナ禍を乗り切ったらとの前提だが、さらなる金融緩和による景気回復の態勢が整った。久しぶりの明るい話題とは、4月から日銀委員にリフレ派の野口旭専修大学教授を菅首相が提示したことだ。菅首相は枠を打ち破った。単純な算数だ。9人中4人がリフレ派となる。今までの3人から1人増えるのは、意味が違う。  雨宮副総裁の就任の’18年以来、日銀プロパーたちが望む金利の安定化により金融緩和の効果が減殺された。日銀のほとんどの人々は、白川前総裁以前の政策を間違っているとは考えておらず、黒田総裁の金融緩和に抵抗する。リフレ派は、そうした勢力に妥協的な黒田総裁を批判する。だが、黒田総裁あればこそ、日本経済は曲がりなりにも維持できたのも事実である。歴史を振り返れば一目瞭然だ。  勢いがあった安倍内閣の初動で、「黒田バズーカ」による異次元の金融緩和がなされ、景気は爆上げとなった。ところが安倍首相は財務省の消費増税8%への圧力に屈し、景気回復を台無しにし、さらに10%に上げるよう脅された。しかし、増税による景気後退をさらなる金融緩和(ハロウィン緩和)で蹴散らし、当時の安倍首相も増税を延期した。その結果、緩やかでも景気回復は続いた。  つまり、時の政権が財務省と戦ってでも本気で景気回復に取り組む時、黒田総裁は金融緩和で呼応している。黒田総裁は財務省出身ながら、本来は日銀総裁になれる立場ではなかった。だが、安倍政権が金融緩和を実現すべく日銀人事で勝負を賭けた時、黒田氏は負けたら破滅の状況で火中の栗を拾うかの如く総裁に就いた。いわば、稀代の勝負師なのだ。  こうした背景を知れば、救国のシナリオが見えよう。

コロナ禍の状態で金融緩和を止めたら、日本経済は即死する

 コロナ禍の状態で金融緩和を止めたら、日本経済は即死する。瀕死の患者に輸血を止めるようなものだからだ。だが瀕死のコロナ禍を乗り切った瞬間に政府の財政出動(主に消費減税)など効果的な政策とともに、さらなる金融緩和を行えば、景気は一気に回復できる。それは、黒田総裁と4人のリフレ派が組めば、他の誰が何を言おうが、可能だ。さんざん白川時代の亡霊に苦しめられたが、好機を掴めば勝てる態勢が整った。  満身創痍の菅首相は、起死回生の決戦を狙っている。  日本の天王山は日銀にあり!
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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