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岸田外交の3つの問題点。軍事抜きの外交など無力だ/倉山満

バイデン大統領との約束を果たせるかは財務省の匙加減次第

 岸田首相は戦後の防衛政策の抜本的見直しを行うと宣言、バイデン大統領に公約した。防衛費も大幅に増額する。ただし、連立与党の公明党に配慮して、数字は言わなかったと報じられている。自民党が「5年以内に防衛費GDP2%」と提言しているが、岸田首相は政府で取りまとめる前に、国際公約とした形だ。言うなれば、外圧を利用して国内を押し切ろうとしている。  防衛費増額の障害は公明党ではない。彼らは黒幕の武器にすぎない。もちろん、ポンコツ野党はお囃子だ。黒幕とは財務省。そして財務省は外圧をかわす術を心得ている。  戦後の防衛政策を振り返ると、パターンがあることに気付く。すなわち、「アメリカが日本に防衛努力を要求する→日本の首相は呑まざるを得ない→しかし日本の大蔵省(財務省)は財源の根拠を首相に求める→首相は板挟みになる→財務省もアメリカを本気で怒らせたくはないので、ある程度の予算支出は認める→申し訳程度の防衛努力は行う→アメリカは呆れる→日本政府はごまかしたと安堵する」だ。  つまり、首相がアメリカ大統領との約束を果たせるかは財務省の匙加減次第。むしろ財務省は、政権に対する拒否権を手にするのだ。岸田首相が罠と知りつつ、その罠を食い破るつもりで飛び込んだなら大したものだが、この構図を理解していないなら、相当にまずい。

今からでも遅くない。来年から防衛費を倍増すべき

 既に「1兆円程度の防衛費増額」との数字が飛んでいるが、それで中国やロシアに張り合えるのか。防衛省自衛隊は「そんなに予算を貰っても使いきれない」と言い訳するのが常だが、無い無い尽くしの自衛隊だ。「たまに撃つ、弾が無いのが玉に瑕」などと言われて何十年。自民党の提言でも実弾訓練の重要性は述べられていた。陸上自衛隊がアメリカ軍楽隊より射撃訓練をしていない、海自と空自は射撃訓練が3年に1回、などという冗談のような状況は、即刻やめさせるべきだ。陸海空ともに存分な実弾訓練ができるような数字を算出するところから始めてはどうか。  そうやって計算していくと、「5年で倍増」など、何の根拠もないと自然とわかるはずだ。  今からでも遅くないから、「来年から倍増すべきではないか。ドイツは即座に国家意思を示したぞ」の声をあげていくべきだ。  そうした観点で、今回の岸田外交を採点しよう。
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日本が自力を示さないとアメリカは動いてくれない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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