大人の水ぼうそう…「帯状疱疹」は夏場に急増
水ぼうそうと聞いて子供の頃のホロ苦い思い出が蘇ってくる人は多いだろう。高熱が出たと思ったら、全身に発疹や水ぶくれができて痒くてたまらず、全身がかさぶただらけ……。親からは「水ぼうそうは一回なったらかからないから、もう、これで大人になっても大丈夫」なんて言われて、子供の頃に誰もが通る道なんだと思った方もいるはずだ。
そんな水ぼうそうだが、こんなことを耳にした方もいるはずだ。
「大人になってからかかった水ぼうそうは大変」
子供の病気と思われがちな水ぼうそうなのだが、まれに大人がかかってしまうこともあり、子供よりもいろいろと大変なんだとか。よく言われるのは以下。
・子供の水ぼうそうと違い高熱が長く続く
・合併症を引き起こしやすく重症化しやすい
・皮膚に跡が残りやすい
などなど。
だが、先述したように一度かかってしまえば大丈夫なわけで、水ぼうそう経験者は「オレは大丈夫」なんて思ったりもするのだが……ここに落とし穴がある。水ぼうそう経験者がかかってしまう“水ぼうそう”があるのだ。その名も帯状疱疹という。
水ぼうそうのウィルスは一度罹患すると、そのまま体内の神経節と言われる神経細胞に隠れて潜伏。復活のときをひたすら待っているのである。いったん復活して発症を起こすと、神経節に沿って痛みを伴った疱疹ができ、悶え苦しむことになる。また、厄介なのはこの疱疹ができる場所によって、さまざまな合併症が引き起こされる。顔にできると耳や目にきてしまい、耳鳴りや最悪なケースでは失明、さらには髄膜炎や歯槽骨の壊死によって歯が抜けてしまうこともある。下腹部にできると排尿障害や排泄障害が出ることもあり、なんとも厄介な病気なのだ。
◆50代以上の病気と言われていたが最近では30代の発症も急増
この病気、そもそも50代以上の年配層がよくなる病気と言われてきたのだが、ここ数年は30代など若い世代の患者も増えているという。皮膚科の医師に聞いた。
「水ぼうそうに一度なった人は体内にウィルスが潜伏します。このウィルスが復活するのは、免疫力が落ちたときや過労やストレスなどが原因です。昔は50代以上のおじさん、おばさん世代の病気なんて言われていましたが、最近は30代や20代の患者さんも増えています。ウチに来た最年少の患者さんだと、小学生の患者さんですね」
また、これからの季節は帯状疱疹が出やすいかもしれないという。
「以前はなりやすい時期はないと言われていたのですが、ある調査で8月に発症者が多いなんて結果も出ています。夏場は夏バテで体力や免疫力が落ちるから、増えるのかもしれませんね」
では、実際に帯状疱疹を発症するとどうなるのか? 経験者に話を聞いた。まず1人目は38歳、本誌編集のHである。
「風邪が1週間くらい治らなくて、ニンニク注射打ったりいろいろ試したんだけど、どうにもよくならない。風邪を引いてからグズグズしたまま10日くらい経って、ようやく症状も落ち着き始めたと思ったらまた風邪がぶり返したような感じがして悪化。すると、右脇腹に虫刺されみたいな痕ができて、ダニにでも刺されたのかと」
Hが真っ先に疑ったのはマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。しかし、同じ布団で寝ている娘や妻はどこも刺されておらず、翌日病院で帯状疱疹と診断された。
「風邪を引いて免疫力が落ちている時に水ぼうそうのウィルスが復活したのでは……と言われました。風邪引いてたのに、仕事がバタバタして睡眠不足だったりしたのもよくなかったんでしょうね」
処方された薬を飲むと3日ほどで症状は改善されたのだが……
「疱疹が出てから3日ほどしたら、ヘソの下から右半身の脇腹が帯状に痛くなったんです。例えるならベルトしている辺りだけが重傷の日焼けみたいにヒリヒリしてる感じです。寝返り打って痛くて目が覚めたり、飼ってるネコが甘えて飛び乗ったときはぶん殴ってやろうと思いました。階段の手すりで打った時なんか失神しそうになるくらい痛かったですから」
現在は快方に向かっているものの、痛みはまだあるという。
「このまま痛みだけ残ることもあって、帯状疱疹後神経痛というそうです。その場合は痛み専門の外来、ペインクリニックに行かなきゃならないそうです」
◆まさかこんなことがきっかけで!? 帯状疱疹発症例いろいろ
甘く見ていると厄介な病気なようだ。他にもこんなことがきっかけで!?というような発症例を集めてみた。
「あまりにも太ってしまったので、炭水化物抜きダイエットとジムでのトレーニングを始めたところ、炭水化物を抜いているので身体に力が入らず、トレーニングを始めて2週間ほどしたところで体重は5kg減ったものの、体調が猛烈に悪化。それから胸の下に帯状疱疹が出ました。これがまたワイシャツが擦れて痛いんですよ。ダイエットに成功しちゃったもんだから、持ってるワイシャツがブカブカで擦れて痛いんです」(36歳・男性・SE)
体重は見事落ちたのだが、代償はデカかったようだ。同じように急な運動で発症した例をもう一つ。
「フットサルに誘われて、5年ぶりにフットサルをしたんだけど、普段から運動なんてまったくしてないからまるでダメダメ。試合後の飲み会でも酒の回りが早くて、なんかおかしいなぁと。翌日から筋肉痛と身体のだるさがしばらく続いて、風邪かなぁと思ったら腹の下あたりに疱疹がバァーッてできて、もう、痛くて痛くて。おまけに排尿障害というか、おしっこのキレがすごく悪くなってトイレ行ってパンツはいてズボンもはいたところで、残ってたオシッコが少し出てお漏らしみたいに……最悪でしたね」(42歳・男性・自動車販売)
この病気は男性だけではなく、もちろん女性もかかることがある。
「息子が風邪を引いて、その風邪をもらってしまいしばらく体調を崩していたんです。そうしたら、顔にワーッとブツブツができてお岩さんみたいになっちゃったんです。私は専業主婦で、ずっと子供といて運動もほとんどしませんでした。身体の抵抗力が落ちてたのかもしれませんね」(37歳・女性・主婦)
夏バテから帯状疱疹に……なんてならないように、日ごろからの健康には十分注意したほうがよさそうである。
取材・文/SPA!帯状疱疹取材班
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