猫が社会現象になるほど人々から愛される理由
最近、猫の可愛らしい仕草を撮影した写真や動画を自然と目にすることが多くなった。YouTubeやVineといった動画投稿サイトにはキュートな猫の動画が連日アップされ、その姿を見て癒やされている人も少なくないだろう。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=908837
書店へ足を運んでも、所狭しと並べられた猫の関連本がつい目にとまってしまう。そしてその人気は日本にとどまらず、ゲームアプリ「ねこあつめ」は海外でも多くのユーザーを虜にしている。和歌山電鉄の終着駅・貴志駅のマスコット三毛猫「たま駅長」は世間の関心を集め、老若男女から愛された。
猫カフェ、猫シャツ、猫侍、いつだって猫展――「ねこ」を取り巻くコンテンツは枚挙に暇がない。なぜこれほどまでに猫は人々の関心を集めるようになったのか? 今回、カメラマンとして犬を撮影しながらも運営する画廊で「ねこ休み展」の開催を控える沼尻年弘氏に、昨今の「ねこ人気」について話を聞いた。
「カメラマンとしてペットショップへ行くことが多いのですが、その撮影内容が昔と今では大きく変わりつつあります。昔はトイプードルやチワワなど、可愛らしい犬の撮影が本当に多かったのですが、最近はロシアンブルーなどの猫ちゃんの撮影も多くなっていますね。猫がより身近になってきたと感じています。ペットショップの人に話を伺うと、最近は犬よりもむしろ、他の人があまり飼っていない猫の人気が特に高いとのことでした。
それと、猫の写真は撮ろうと思えば誰でも簡単に撮れるものだと思うんです。公園や路地裏に行けば、野良猫の一匹はいるじゃないですか。プロから見てうまい写真と、素人から見てうまい写真(=見たい写真)というのは決して同じではありませんし、その身近さが猫の人気に火をつけたのかもしれませんね」
SNSが世間に浸透したことによって、撮った写真や動画を共有し楽しむ文化が一般的になったことも、ひとつの要因と考えられるかもしれない。
「TwitterやInstagramなど、写真を気軽に発信できるメディアが増えたことも影響していると思います。実際に、もふもふ猫のふーちゃんは、Twitterに写真を投稿したことで一躍『時の猫』になって、新作の書籍発売も決定していますからね。今はYouTubeもありますし、飼い主が意図してメディアに発信出来る時代になってきているのも大きなポイントかなと感じます。
以前、雑誌の企画で『あなたは犬派? 猫派?』とありがちなアンケートを取ったことがあるのですが、犬派が過半数を超えて70%程度で猫派は30%程度だったのに、猫の写真展のほうが年間で開催されてる数が多いのは面白いなと思いました。それって飼いたいのは犬だけど、見たいのは猫ってことなのでしょうか」
一般社団法人ペットフード協会の「平成25年度 全国犬・猫飼育実態調査結果」を見ると、犬の推計飼育頭数は1087万頭で、猫の飼育頭数は974万頭であり、近いうちに犬の人気を猫が上回るのではないかとも言われている。そんなペットの代表格である犬と猫の飼い主には、一般的にどんな違いがあるのだろうか?
「犬を飼っていたことがあるのでよくわかるのですが、洋服を着せたりして飼い犬を我が子のように溺愛する飼い主さんが多いですね。現に犬のほうが遊ばせるおもちゃやグッズなどの市場も広く、お金をかけるところが多いのも特徴です。逆に猫は放っておいても遊んでくれるし、トイレもこそっとする。猫に着せる洋服があまり無いように、溺愛したくてもすることがなく、ドライな関係で他の猫も広く好きになる飼い主さんが多いのかなと思います」
犬の飼い主には自身の飼い犬だけを溺愛する人が多く、猫の飼い主には飼い猫だけにはこだわらないドライな関係で接している人が多いということだろう。だからこそ猫の人気は、社会現象とも言える広がりを見せているのかもしれない。
「写真展を開催して一番感じるのは、老若男女に楽しんで頂けているということです。野良犬は日本にあまりいないけど、野良猫はたくさんいる。その身近さが大きく影響していると感じます。あと、猫は英語で直訳すると“Cat”ですが、海外だと“Neko”でも通じるくらいポピュラーな存在になってきていますね」
【沼尻年弘氏】
フォトグラファー。運営する浅草橋のTODAYS GALLERY STUDIOでの主宰・企画・構成なども手がける。都内最大級の規模となる、猫の合同写真&物販展「ねこ休み展」が8月14日から30日まで開催される。
<取材・文/北村篤裕>
ハッシュタグ