なぜ電車の中では過剰にイライラしてしまうのか?【満員電車の心理学】
電車の中で乗客のマナーの悪さに不愉快な思いをされた方は多いのではないだろうか。一般社団法人日本民営鉄道協会が行った「平成25(2013)年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング」を下記の表にまとめた。1位の「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」や、3位の「ヘッドホンからの音もれ」に、誰もがイライラした経験があるだろう。
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街の中での騒々しい会話などはそこまで気にならないのに、なぜ電車の中では過剰にイライラしてしまうのだろうか。これまで多くの心理学の書籍を世に出してきた目白大学教授の渋谷昌三氏は近著『電車の中を10倍楽しむ心理学』(育鵬社)で、「なわばり意識」がこの原因を理解するキーワードだと分析する。
人は、音でも自分のなわばりを主張できるのだそうだ。例えば、車の窓を開けてガンガン大音量の音楽をかけたり、バイクに乗りながら音楽をかけている若者がいるが、音を聞かせることにより自分のなわばりを誇示しているのである。屋外では他人のなわばりを避けることができるが、身動きの取れない電車の中での騒々しい会話等は【無理やり聞かされる=強制的に相手のなわばりに入れられる】のであり、これが不快の原因なのだそうだ。
このように、電車の中では見えない「なわばり」がたくさんあるという。例えば、車内で私物を床に置いたりするのも「ここは自分の場所だ」となわばりを主張しているのだそうだ。
また、電車に乗るとすぐにスマホをいじる人や、電車の中で化粧をする女性も「なわばり意識」が大いに関係しているとのこと。
大量の刺激に囲まれている現代人は、できるだけ入力を制限したりして現実の生活から退避し、過剰な負荷環境に順応しようとするのだそうだ。電車の中でスマホに没頭している人は、周りとの関係をシャットダウンし、自分のなわばりにとじこもっている状態なのだという。
また、電車の中で女性が平気で化粧できるのは、周りの人間を人格を持った存在ではないととらえ、自分だけのカプセルに入った心理状態になっていると指摘する。だからこそ、公共の場である電車の中でも化粧というきわめて私的なことができるのだそうだ。
こういうことを知っているだけでも、電車の中での光景がいつもと違って見えてくるのではないだろうか。
最後に、渋谷氏は騒々しい会話の不快感を軽減するためには自ら相手のなわばりに入り込むのが意外と有効だと提案している。電車の中での騒々しい会話も、聞き耳を立て、相槌を打ってしまうくらい聞いてみたら案外おもしろいかもしれない。 <取材・文/吉留哲也>
『電車の中を10倍楽しむ心理学』 もう「通勤時間が退屈だ」なんて言わせない! |
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