第508回

4月29日「あなたの名前、検索されてますよ」

・若い人には相手を問わずできるだけ礼儀正しく接するようにしている。自分の会社の新入社員でも呼び捨てにしたことはないし、たいてい敬語で対応している。多くの大人たちにはそんなふうにしてほしいと思う。「後生おそるべし」という言葉は、若い人に対しては無条件で敬意を払うべきだ、という意味だ。未来の可能性があることだけで偉いのである。

・ただし。この言葉には続きがある。
「子曰。後生可畏。焉知來者之不如今也。四十五十而無聞焉。斯亦不足畏也已。」

・これを現代語訳してみよう。

「孔子先生の言葉から。

若い人は、”若い”というだけでリスペクトされてよい。可能性という資産を持っているから。

どんなにダメなやつでも、今見えていない才能を発揮していきなりブレイクするかもしれない。ネットによって趣味趣向が細分化されそれぞれに商業化への道ができている今、どんな才能が受けるか誰にも予想できない。一夜にしての大成功もありえる。

しかし、逆に、歳をとっている相手のことは、クールに見極めよう。年長というだけで、キャリアが長いというだけでいばっている人。オレはあの仕事に関わったとか、こんな有名人を知っているとか、そんなことをしつこく言う人、やたらと説教したがる人。良い服を着て、声が大きくて、ずいぶん立派に見える人。本物なのか偽物なのか、今ならネットで検索して調べればすぐわかる。40歳以上で評価できる履歴がなかったら。

そいつは、とるに足らないやつだ。可能性は、ない」

・つまり、「40歳や50歳過ぎてヒットがなかったらそいつはゴミだ無視しましょう」ということだ。孔子先生、なかなかきっついですね。

・実際、若い頃に丁寧な対応されて図に乗るようなやつにかぎって40になっても50になっても何者にもなれず、なおかつ年をとればとるほどいばりたがる。そういうおっさんが裏で笑いものにされている風景をよく見かける。偉そうに説教したり指図したりしようとしてるその人がどれほどエライものか、今ならその場でスマホ検索すればすぐわかってしまうからだ。怖いですね。

2018.04.29 |  第501回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。