第506回

4月15日「ネットカフェで暮らそう」

・ネットカフェに泊まり続けている若者(や中年)の取材映像をやたらと悲惨ぽく編集して、むりやり社会問題にしようとする報道をよく見かける。ネットカフェがなかったとしたら彼らは路上で寝ていたわけである。一世代前は、そこから多くの人々が犯罪者になったり浮浪者(不可逆的ホームレス)になったりしたわけだ。ネットカフェは今の若者のセーフティネットだ、と考えてはもらえないだろうか。

・先進国の大都市で、スラムは街の外ではなくそのど真ん中に出現する。ニューヨークでも上海でも香港でも、治安や衛生状態が良くない地域は高層ビル群の真下にうずくまっている。日本も格差社会化が進行しているにも関わらず繁華街にスラムができないのは、ネットカフェのような場所が生まれているからだと考える。

・ネットカフェが臭いとか狭いとか言ってる人って贅沢すぎるよ。たいてい結構清潔なシャワーもあるしジュースも飲み放題。ゆっくり眠れるし。そして十分なスペックのパソコンがあって、SNSも5ちゃんもゲームもやり放題、テレビだって映画だっていくらでも見られる。オタクにとっては天国じゃないか。特に物書きとか絵描きを目指している人は勉強もできるし仕事もできるし、発信もできる。人生一発逆転だって狙えるのだ。

・未経験の人は、一度行ってみたらいい。僕は何日か暮らしてみてすごく楽しいと思えてから人生すごくラクになった。1週間パックとか使えば月に5、6万。もちろんフリードリンクだけでなく外食で栄養とるとして、月に8万くらいで生きてけるかなあと思った。

・落語に出てくるような江戸時代の町人は、週に1日か2日働いて、あとは長屋でごろごろしてたそうだよ。月8万って、それくらいの感じでいけるんじゃないか。あるいはベーシックインカムを採用したとして配付金額はこのあたりに落ち着くのではないかとも考える。AI技術が多くの分野に適応される時代。人間は、そんなに仕事しなくてもよくなる。あるいは、できなくなる。そこであわてず、あせらず、本当に人間的な仕事だけをして、後は好きなことをして暮らす……そんなライフスタイルが見えてくる。

2018.04.15 |  第511回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。