第92回

02年11月18日「すごいぞイーバンク」

・漫画家のにしの公平さんが、1円くれた。というのはインターネット取引専門のイーバンク銀行の「メールサービス」の実験。僕のメールアドレスに対して振り込みをしてくれたのだ。

・メールサービスについては、以前書いたことがある。相手の名前も口座番号も知らなくても、メアドさえわかれば勝手にお金を振り込むこともできる。例えば面白いホームページをめっけたらそのオーナーに対して「おひねり」「投げ銭」形式のお金の払い方が簡単にできるというわけだ。しかも1円から。

・以前はそれを受け取る側もこの銀行に口座をもっていなければ無理だった。しかし今は、振り込みの知らせが届いてから自分の口座を指定して、そこに転送してもらうことができるようになった。今回、試しにやってみたら、とても簡単。メールの指示に従って手続きは数分で終了、その1~2日後には別の銀行でその1円を引き出すことができた。

02年11月19日「書を捨てよ家に帰ろう」

・「『ひらきこもりのすすめ』著者なら必見」と講談社の田中さんから勧められ、インディーズのドキュメンタリー映画『home』観る。日常生活に入り込んでいく超小型のカメラが、人間関係を、そして人間を、内側から変容させていく……というようなことを僕は書いたが、その状況を作品そのもので立証してしまっているのがこの映画だ。

・末期癌の祖母、鬱病の母、そして7年間ひきこもっている兄がいる田舎の家に、デジカメを手に帰る弟=小林貴裕監督。その視覚そのままの映像で、悲惨な家の中の状況が映し出されていく。撮らないで撮らないでと泣く母親を、半笑いしながら撮り続ける監督。

・潔癖症が高じて強迫神経症の域にある兄は、異常な執着心で掃除を繰り返している。猫なで声で辛抱強く話しかけ、殴られても蹴られても耐えながら、ついには立入禁止の部屋にまで入り込む監督。そうやって、兄の奇行をしつこく、しつこく撮り続ける。

・残酷な武器であるカメラが、結果的には家族を、そして監督自身を癒し、救っていく展開がすごい。やがて兄は勝手に弟のカメラを持ち出し、激しく独白する。その直後、乗れないはずのクルマを運転して家を出るのである。

02年11月20日「憧れのブロードウェイ」

・中野ブロードウェイで秘密アジト物件探し。ってここに書いたら秘密でなくなるか。中野ブロードウェイに住んでる人、もしくは事務所構えている人、ぜひご連絡下さい。香林坊でおごりますので。

・構内端末で、ブロードウェイの歴史等を見ることができる。1966年オープン当初は「アメリカのショッピングセンター方式を取り入れた超デラックスビルとして大変な話題を集めました」ということである。住居スペースにはジュリーや青島幸夫も住んでいたのだ。オタクーロン城と呼ばれる現在の姿を、誰も予想しなかったことだろう。

・写真は、最近開店した『ワンダーブロードウェイ』。月5500円~8000円で自分のショーケースが確保できる。

2005.01.17 |  第91回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。