第109回

03年3月24日「杉並区偉い」

・山村浩二監督作品『頭山』を観る機会を探していたら、意外なところに見つかった。杉並の公民館のホールで上映されていたのである。東京国際アニメフェアの関連イベントらしい。

・公民館といっても、DLP上映システムもあるし、音響もしっかりしている。『頭山』だけでなく、川本喜八郎、森まさあき、伊藤有壱、うるまでるび etc… 各ジャンルのアニメ作家のショート作品を日替わりで大量に上映していて、とても楽しめた。アート系のショートアニメ作家の発表の場は今非常に少ない。特に、大スクリーンに上映される機会は貴重だ。

・『頭山』は日本の風景、喋り、音楽の美しさをきちんと現代的に表現した傑作。この日の上映中に発表があったようで、スクリーンに突然「アカデミー賞おめでとうございます」の文字が。一瞬『頭山』が獲ったのかと思った。でも、近い将来短編アニメーション部門で日本人がオスカーを獲る可能性はとても高いと思う。こういうタイプの作品が世界に認められていく可能性を知らしめたことだけでも、意義は大きい。突破口は出来たわけだ。

03年3月26日「短気な時代」

・短いアニメを次々と見るのは気持ちいいなあ、と思っていた矢先、『メイドインワリオ』(任天堂/GBA)にハマった。一個数秒のゲームを次々と(全部で200種以上)こなしていくのだ。短いゲームを立て続けにプレイするのも、ものすごく気持ちいい。

・映像に対しても、ゲームに対しても、いつのまにか気が短くなっている自分に気付く。他の人も同じだと思う。映像なら数分、ゲームなら数秒が適正時間だったりして。というのは極端だけど、連続ドラマとか長編映画って、そろそろすたれてきそうな予感がするのだ。

03年3月27日「中野ブロードウェイの秘密」

・中野ブロードウェイの防災訓練。管理責任者に案内してもらいながら、建物の表裏を歩き回る。40年前には最先端の超高級マンションだっただけあって、随所に意外なメカが仕込まれていて感動しきり。隠し扉とか隠し通路も多数。しかし参加者はほとんど年輩の方々ばかり。若い住民はこういうものの存在を知るチャンスがないのだ。

・年輩の商店主の方々に話しかけられた。「最近はここもまた話題の場所になってきていて、テレビの取材もよく入る。今日はタレントのエガシラが来るらしい。知ってるだろ? ジャニーズのエガシラ」と。エガシラではなくアラシと言いたかったらしい。

・一般にあまり知られていないが中野ブロードウェイの上層階には格安のホテルもあるし、屋上にはゴルフのミニコースやプールもある。地階には食料倉庫もある。防災シャッターも完璧で、有事の際に完全に閉めきっても住民は内部で2年から3年を生き延びることができるという噂。鳩も湧き水もうまいし、最高です!

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。