第117回

03年5月22日「ご無沙汰」

・高橋名人と、極秘会合。

・ファミコン名人・高橋利幸のことを君は知っているか。かつて「16連射の男」あるいは「黄金の指」と呼ばれ、小学生の「尊敬する人」ナンバーワンだった偉人だ。1985年、彼が得意とする『スターソルジャー』というシューティング・ゲームが日本全国を興奮のるつぼに叩き込んだ。このソフトは売り上げ的に今の浜崎や宇多田を上回っていたのだ。

・そのゲームキューブ対応リメイク版が7月10日にリリースされる。ハドソン社としての、ファミコン20周年企画の一環らしい。僕には、今このタイミングに仕掛けたい「計画」があった。

・当時僕は『高橋名人vs毛利名人・スターソルジャーの秘密』という映画のシナリオを書いた。このゲームで、2大名人を対決させたのである。映画はもちろん大ヒットとなった(今はカルト化しファイル交換の人気アイテムとなっているという噂もある)。その続編を、制作しようと思っていた。東京ドームで、高橋名人と毛利名人を再び対決させる。そして20年ぶりに、決着をつけさせるのだ! ……というわけでまず、高橋名人に出演を依頼したのである。

・しかし、あっさり断られた。

03年5月27日「お茶会」

・中野ブロードウェイに開設したクリエーター・サロン『バーチァリ庵』で、マンガ家の木ノ花さくや先生やすねやかずみ先生と一緒に「お茶会」を定期開催している。

・もちろん様々なジャンルのクリエーターとここで毎日会い、かつコラボレーションも進めているのだが、「お茶会」についてはプロアマ問わず参加者を募集した。ただの物好きも含めてたくさんのアクセスをもらった。いっぺんに集めたらただのトークショウになってしまうので、毎週の土日を活用して、10人程度でテーブルを囲み、だらだら話してみた。

・これがなかなかいい感じだ。ネット上でできること、あるいは中野ブロードウェイという場でできること、どちらについても、プロにない発想のアイデアがいろいろ出てきた。実現に向けて走り出そうと思う。

・今日で、アクセスしてくれた人全員と一度は会ったことになる。ところでこういう時に手を挙げないで、いきなり思いついて押しかけて来る人が必ずいる。そういう奴らを相手にぼったくりバーでもやってみようかと思っている。

03年5月29日「PS-3?」

・ソニーのニューハード「PSX」発表。PS-2のチップとOSを中核にして、テレビチューナーやDVDレコーダー、HDDレコーダーを積んでいる。ゲームやネットだけでなく、テレビ映像の録画や制御までを行なうというものだ。プレステがソニーのデジタル家電戦略のエンジンとなることが明確になってきた。

・「ただの一体型じゃん」という意見が多く出ているようだけど、僕はこれ、事実上PS-3の原型だと思う。新しいタイプのゲームを作り出せるプラットフォームだ。

・例えばテレビをリモコンでせわしなくカチャカチャと変えて見るとか、HDD録画した映像を自在にコントロールしながら見るとか、そういう感覚の延長にゲームを設定できると思う。多くのゲーム業界人は(ゲームが楽しすぎるせいで)デジタル放送やHDDレコーディングを実際にいろいろ体験してみたり、その可能性をじっくり妄想してみることをさぼっている気がする。ここでパラダイムを変えて考え直してみませんか。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。