第129回

03年8月25日「まだまだ」

・「ブロードバンドコンテンツ(中略)支援事業」公募プロジェクト審査会、続いている。

・今年の傾向をもう一つ挙げると、マンガ・アニメ・ゲーム関係の応募が多くなっていること。自分が結構こだわってるテーマなので、遂に時機が来たのかと嬉しい反面、点数が辛くなってしまったりしないように注意する。マニアックなコンテンツをどう作り、どうネットに載せ、どう課金していくか、真剣に考えるとこれはかなり難しい。

03年8月27日「新宿中央公園が国際観光名所になる?」

・『パーフェクトブルー』『千年女優』の今敏監督の新作アニメ『東京ゴッドファーザーズ』試写。おかま、おやじ、コギャルのホームレス3人組が、クリスマスの夜に拾った赤ん坊を抱えて東京の街を東奔西走する。

・家出した女子高生がそのまま生きて行けちゃう、そんな東京のポップな状況をうまく描写している。ホームレスだけでなく同性愛者、やくざ、不法滞在外人、精神病者、猫おばさん、等々、豊かな都市のマイノリティーにとても暖かい光を当てている。『逆噴射家族』や『タンポポ』みたいに、フリーキーな国ニッポンの半ドキュメンタリーとして欧米に受けそう。

・実写でも撮れる映画ではあるが、ただ実写でやると、この国では一流品にならないと断言できてしまうことが悲しい。カメラを回せば撮れてしまう現在東京の風景をいちいち緻密にリアルに描き起こしていくのはかなりマゾヒスティックな作業だったと思う。

・さて試写会場でデジタルハリウッドの杉山校長にばったり会った……と今日記データベースに入力していたら、この人と前にあったのはきっちり1年前の今日(8/27)だったという記録が出てきた。前回は高円寺阿波踊りの会場。

03年8月28日「ポスト・バブルの戦略」

・『バブルガムクライシス』シリーズ久々の新作が劇場用アニメーション『パラサイトドールズ』として完成したと聞き、さっそく試写に。”ブーマ”と呼ばれる人造人間が引き起こす犯罪に対応するA.D.POLICEの活躍を描く。今回は、そのブーマが次々と惨殺されていく事件の謎を追う。

・このシリーズが生まれた土壌は80年代のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)文化である。『ブレードランナー』など欧米のカルトSFに影響を受けつつ、マンガ文化の延長に成立したものである。一本1万円以上していたビデオソフト市場が、今よりずっとマニアックだったオタク層によって支えられていたのだ。

・国際的競争力のあるコンテンツとしてアニメが再発見されている今、その一部分が、こういった形で再プロデュースされている状況は嬉しい。ただ、後が続かずに消えてしまったもの、DVD化すらされていないものの中にも、秀作は多いのだ。最近それを血眼になって調査しているのは日本の映画やアニメ関係者でなく、ハリウッドのプロデューサーだと聞く。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。