第141回

03年11月11日「中野名物また一つ消滅」

・前回紹介した手前もあり中野光座に「新転位・21」の、『ジロさんの憂鬱』を見に行く。若い出演者がみんな喉をつぶしていて、なんというか凄い舞台だった。

・さて、そのお隣のボディービルの殿堂「中野ヘルスクラブ」は閉鎖になってしまっていた。どうりで最近筋肉モリモリの人を見かけない。かなり本気の人が千葉や埼玉からも通ってきていたそうだから、みんな困っていると思う。東京の知事がシュワルツェネッガーだったら残ったろうになあ。

03年11月12日「原題はパレットプルーフモンク(防弾坊主)」

・『バレットモンク』試写。NYのダウンタウンをうろつくカンフー映画マニアのチンピラ青年が、行きがかり上で(?)「悟り」を開いてしまい、伝説の巻物の守護者としての役割を受け継ぐ、というなかなか珍妙な話。

・なぜかチベットからNYまでやって来ている高層を演じるのがチョウ・ユンファで、プロデュースはジョン・ウー。そして空中を駆け回り素手で弾丸の嵐に立ち向かうアクション。つまりこの映画はワイヤーアクション本家本元・香港からの、『マトリックス』シリーズに対するカウンターである。

・そして東洋人ならばVRの概念を持ち出さなくても超常アクションをやっちゃっていいのである。荒唐無稽さがひたすら爽快な映画だった。

03年11月17日「今年も締めの時期ですね」

・デジタルコンテンツグランプリ、本審査会。今年から体系が変わり、大きくは作品、サービス・システム、制作者の3ジャンルに分けてまずそれぞれ審査が行われている。僕は作品担当審査委員の一員。

・エントリー作品は70本にも達し、かつデジタルコンテンツのタイトルなら映画だろうがゲームだろうが全てをまず同列にて評価しなければならないので、なかなか難しい。例えば初見のゲームの魅力を短時間で理解することは難しいが、知っているソフトの特性についてはできるだけ正確に、しかも主観を導入せずに(ほめもけなしもせず)他の審査員に伝えることがそれぞれの役割ということか。

・さて、今年から審査員ノミネートというシステムが稼働している。応募作以外でも気になる作品があれば審査員から推薦できるのである。ゲームの領域でこういうコンテストに上がってこないものとして思いつくところが2種類あった。楽器や武器の形をしたコントローラーを直接テレビ画面に繋いでプレイする「eトーイ系」と、パソコンゲーム界で独自の美学を構築しつつある「美少女ゲーム系」だ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。