第151回

04年2月2日「ポパイ世代を信じるな」

・最近の若者はちゃらちゃらしてるとかすぐひきもりやがってとか言われてるけど、若者史上最悪は80年代、僕の世代の若い頃だったと自信を持って言える。

・当時、既にもう大学はバーチャルなブランドに成り下がっていて勉強なんかする場所じゃなくなっていた。なのにすっかり骨抜きにされて育った世代にはスピンアウトする根性などなく、レンタルビデオもパソコンもインターネットもまだなくて、個人的な興味を深めようとする行為はネクラと言われ忌み嫌われた。

・ポパイやホットドッグプレス読んで、ただただマニュアル通りにセックスしたりチューハイのんだりテニスやったりしていただけなのだ。そして親の金で留学のふりして2、3年ちゃらちゃら遊んで来るようなヤツらがいわゆるエリートだった。すっかりバカになって帰ってきても好景気だからコネとカネでいくらでも就職口はあった。

・こういう世代が40代になって社会の中堅に位置するようになったら、そして国会議員になるヤツなんかが出始めたら、世の中はどれくらいダメになるか、考えれば考えるほどおかしかった。遂にその時が来た。

04年2月9日「定期刊行化熱望」

・講談社の黒い秘密兵器こと太田克史さんが『ファウスト』第2号持参で。ゲームもマンガもアニメもいいけど小説もいい、と思える文芸誌だ。日本のコンテンツ産業が熱いと騒がれているが、まずきちんと注目すべきは、それを下支えしている「物語」創作力だと思う。

・舞城王太郎さんの文章のためにオリジナルフォントを作ったりと、本としての形式にこだわった野心的な試みも多数。書店で手に取るだけで新しいパワーをびんびん感じることができると思う。この第2号までは試験刊行らしいけど、すごい売れ行きみたいなのできっと定期刊行化するだろう(と僕は勝手に思いこんでいる)。

・ところで僕はひきこもりが初めて風俗にゆく話などを書いたんだけど、ひきこもり作家の滝本竜彦さんは本当に初めてソープに行ってみた体験談を書いていた。他の雑誌では絶対にありえないかぶり方である。

04年2月14日「109の7Fに注目」

・最近は渋谷をうろついている。実は物件を探してる。やはりこれからはビットバレーだし……というのは冗談だが、ファッションとかITとは別の文脈でこれから渋谷が面白くなりそうな予感がしていて。また報告します。

・さて懇意にしてる内装屋さんから、ちょっと面白い情報をもらった。今、SHIBUYA109(例のシリンダービルですね)の7階に広いスペースが空きっぱなしになっている(=写真)。ここ(5店舗分)は意欲と才能のある人材(ただし新人のみ)に超格安(内装代ただ、敷金は100万円、賃料は売り上げの20%)で貸し出すことになっていて、今その応募を受け付けているらしい。

・もちろん僕は無理だけど、若い人にはこういうチャンスは強く薦めたい。これは非常に実際的な人材発掘事業と言える。デザイナーであれ、バイヤーやキュレーターであれ、ここに店を持てば才能の絶対価値が即座にはかられる。そういうやり方が重要なのだ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。