第156回

3月15日「インフラは揃った、さあ次は!?」

・新世代(3G)ケータイの加入者数は1500万人に達したそうだ。パケ料定額サービスもスタートしている。愉しく見せられる形式さえあれば、コンテンツの配信端末としてここはすばらしい開拓地だ。そこで今注目されているのが、デジタルマンガ。

・セルシス社主催の『モバイルコミックソリューション2004』というイベントに行ってみた。アニメ制作ツール『RETAS!PRO』で知られているセルシス社は、モバイルコミック用のツールからビューアーまでのシステム『ComicSurfing』を発表していて、auのEZチャンネル等でマンガ配信サービスをスタートしている。

・週刊アスキーの福岡編集長、マンガコラムニストの夏目房之介さんとセルシスの川上社長によるトークセッション(=写真)等、とても興味深かった。『ComicSurfing』については今のところ「眠っていたコミックがビジネスになる!」というのが訴求ポイントのようだ。つまりケータイを過去のマンガ作品の再利用の場として設定しているわけだ。しかし現場の人 達からは「新しいメディアの文法を生かした新しい作品に期待する」という意見が繰り返し提示されていた。この距離は少しずつ埋まっていくと僕は思う。

3月16日「今度はアクション映画」

・『クリムゾン・リバー2』試写。主演はもちろんジャン・レノ、そして脚本はリュック・ベッソン。「流血するキリスト像」「死体と謎の紋章」「不死身の黒僧侶」……と、次から次に提示されるパズルのピースが、後半見事に組み合わさっていく。非常にダークで難解なシークエンスが続くが、それらは美しく派手なアクションで繋がっていくため、飽きさせない。

・ストーリーをこれほど緻密に練り上げるスタイルは、日本では実写映画より長編アニメの世界にある。押井さんや大友さんはリュック・ベッソンみたいに脚本だけの仕事も増やしたらいいのではと思う。監督までやるとなかなか完成しないし、リスクも大きいし。

3月17日「テレビ会議で」

・講義を持っている早稲田大の国際情報通信科が、本年度より本庄の新キャンパスに移転する。別の仕事を持ちながら本庄に通うのは大変なのだが、今まで通り早稲田キャンパスにいて向こうの教室にいる生徒と対話しつつ授業を進められる「遠隔授業システム」というのがあるというので見学に行った。

・早稲田と本庄それぞれ3つの教室どうしを1Gの回線で常時接続していて、そこにVSXというテレビ会議システムを繋いでいた。音声も映像もかなりクリアで、DVDやパソコンの画像もそのまま相手方のスクリーンに出しながら説明できる。

・このシステム、実はかなり低価格(一式¥200万程度)かつコンパクト(一式全部手提げ袋におさまってしまうくらい)なものだ。回線も1Gと言わず数メガ程度の回線で同様のことは可能らしい。個人的にも導入してみようかなあと思った。事務所と自宅を繋ぐとか、あるいは旅先のホテルと繋ぐとか。

*それと久々ですが僕の小説が映像化されます。『世にも奇妙な物語』の1エピソードとして。『2999年のゲームキッズ完全版』から「自分カウンセラー」という一編です。29日夜、フジテレビで。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。