第165回

5月19日「試験の問題」

・某有名進学塾の関連出版社が発刊済みオリジナルテキストを6万部も回収、との報道。使用していた文書の著作権について洗い直し作業を進めているわけである。

・例えば国語の問題で使われる文学作品や評論文等について、もっと著作権を尊重するべきでは、という議論がある。小さなこととはいえ物書きの権利が保証されていくのはありがたい。

・このあたりは確かに難しいところである。入学試験問題については事前に許諾を得る作業が困難なので、基本的に著作権フリー特区ということになっている。 ゆえに、テキストや問題集に入学試験の問題を転載する場合もフリーという慣習になっていた。それが変わってきたわけだ。

・さて、少し前に某教材出版社から連絡を頂いた。それで、自分の作品の一部が大阪教育大の入学試験に使われたことを初めて知った。もちろんその時点までは儲けはないわけだが、この出版社が大学入学試験問題集を出す時点で、使用料を支払ってくれるということなのである。

・それから、実際に入学試験に採用されたという実績が副次的な効果を生むこともわかった。それ以降、別の出版社や予備校から、模擬試験などで当方の出版物の別の部分を使いたいとの依頼が続々と入ったのだ。もちろん全てきちんと支払いがある話だ。

・つまり二次使用はタダだけど、そのおかげでほぼ自動的に三次使用の収益が入るというビジネスモデルが成立しつつあるのだ。うれしい。どんどん使って下さい。

5月20日「問題の試験」

・光文社の編集さんから連絡が入る。瀬名秀明さん監修の『ロボット・オペラ!』というアンソロジーに、僕のショート・ショートを3本収録してくれるという。どれも10年以上も前の作品であり、その調査力、というか目利き力に驚く(10年前の労力がわずかながらでも収益を上げることもある、とすると物書きという仕事もそんなに割に合わなくもないよね)。

・さてその一つ『高校教師』という話は近未来の試験問題の話なのだが、これなんかを実際に入学試験に使ってくれる高校があったら楽しいのに……と思ったら、千葉の県立高入試でそれに近いことが実現していたらしい。

・「地図を見ながら公民館までおじいさんを道案内する作文を書くという出題」だったそうだ。素晴らしい。

・ところが受験生の半数は0点だったんだって。泣き出した受験生もいたんだって。だから渡辺浩弐の小説を読んでおけばよかったんだって!

5月21日「投げ銭プロジェクト?」

・6月からの新番組『クリエーターズライブ!』(BSi 毎週水曜25:00~)の撮影現場に。

・前回書いたバンダイネットワークとボーダフォンがバックアップしている企画だ。携帯ゲームやアニメ作品を募集し、発表し、そして優秀作品については即座に課金配信してしまう、というもの。

・ゲームやアプリはボーダフォン対応の、つまりJAVAソフトになるので、腕を発揮できるという人は多いだろう。ボーダフォンが面白いのは、1アプリごとに、バラで売ることができるということだ。一か月の会費制とかじゃなくて。それからオープン課金というシステムで、代金は全て電話料金と一緒に代行徴収してくれる。

・買う方にとっては、面白いソフトを見付けたらその代金をボタン一つで支払えるわけだ。気に入ったクリエーターがいたら、その人に対する応援として、つまり投げ銭の感覚で払ってあげるってのもありかも。

・そういう環境だからこそ、クリエーターの全体像を紹介できるテレビメディアは重要だ
と思う。

2005.12.20 |  第161回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。