第167回

5月24日「世界遺産に指定して!」

・『東京一週間』で中野特集をやるということで、『中野ブロードウェイ評論家』として取材を受ける。中野をぶらぶら歩きつつ、お薦めの場所などをいくつか紹介させてもらった。6/22発売号。

・中野は平成16年ではなく昭和79年なのである。ネット時代の今、中野ブロードウェイはたとえ行かなくともそこに存在することに意味がある聖地のような場所である。そしてこのビルはもう半分くらい異界に入り込んでいる。というような話。最近、特に北口の昭和レトロな雰囲気が若い人に受けているらしい。一帯を恵比寿ガーデンプレイスや六本木ヒルズみたいにしちまおうなんて再開発のプロジェクトが立ち上がっているようだが、中野ブロードウェイのような場所は狙って造り出せるものではない。というかもうビルや道路の時代ではない。無限の広さを持ったバーチャル空間とリンケージできるコンテンツ空間こそが重要なのである。

5月25日「ハマるかも」

・あっという間にハリウッドレベルになった韓国映画の秘密を探ろうとビデオ三昧してるうちに、韓国語に興味を持った。集中して見ていると、とても日本語に近いかもしれないと思うことがあるのだ。

・例えば「アラ、ソ」と言ってるセリフは「あら、そう」と訳されている。それから「カムサハムニダ」は「感謝ハムニダ」だろうし、「アンニョンハシムニカ」は「安寧ハシムニカ」だろう。「ありがとう」が「おおきに」になるより、ずっと近い。距離感としては韓国語って日本語の方言のようなもの、あるいは日本語が韓国語の方言のようなものなのかもしれない。もっと勉強してみよう。

5月26日「発火地点になるか」

・講談社の太田さんと打ち合わせ。ていうかこの人が編集長を務める文芸誌『ファウスト』第3号の原稿(『Hな人人』というシリーズ小説です)を無事、校了。ていうかつまり、これまで実験的に発刊されていた『ファウスト』、続くことになったのである。やったー。おめでとうございます。

・前号は自分でも何冊か買って、マンガやアニメと比べて小説って元気ないよね、という人にはプレゼントするようにしていた。マンガやアニメやゲームと同じように小説の世界も今とても大きな動きがある。『ファウスト』はそのムーブメントを牽引できるメディアになると思う。というか、なってね。

・……と、その打ち合わせ後、また電話。太田編集長がんばりすぎて原稿が溢れてしまったらしい。わはは。僕はショートショート3本上げていたんだけど、ダイエットに協力して1本は次回しにすることに。この連載、このペースだと単行本出るのは10年後ということになりそうだ。それもいいか。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。