第173回

7月16日「西洋版孫悟空?」

・『ヘルボーイ』試写。赤猿がマッチョ化したような姿の「ヘルボーイ」の他、発火能力のある美女や、読心能力を持つ半魚人などが活躍する。ナチやFBIが超常現象を戦争利用しようとしている、という設定を異形の超能力者たちに託しているわけだ。

・無茶苦茶な設定を超一級の技術で無理矢理に実写映画化してしまうこのパターンが僕は大好きだ。「アメコミSFX」はファン層的にも一ジャンルとして認定してもよいと思う。ただしコミックと違って映画には、科学技術や歴史考証にも明晰さが要求される。そこで背景や世界観が後付けで設定される。そのノウハウを今ハリウッドは日本のマンガやアニメに求めているわけである。

・敵モンスターとの戦いは主に地下鉄や下水道など、大都市の暗い地下空間で行われる。
それが現実的でありつつ神話的。

7月21日「こんな映画祭もありかも」

・23歳以下のCGコンテスト「TIGRAFユースコンテスト」授賞式@SKIPシティ。先日の審査会で選出した30作品を一挙上映、その中から優秀作、最優秀作を決定、表彰した。

・今は個人作品でも大スクリーンの上映に十分、耐える。いや、個人作家の緻密なこだわりは大画面で見たほうがより受け入れやすいものだ。それに短くてピリリとインパクトのある作品を立て続けに見るのはとても楽しい。インディーズ映画祭としても、短編映画祭としても、現段階ではこの形式がベストだと思う。

・映画産業やアニメ産業に対して、国家プロジェクトとしては10年後、20年後を見据えてサポートしていくべきだと思うが、ここは支援効果がかなり早く期待できる場所である。投資家の皆さん、どうでしょう。

・さてイベントは5時間以上に及び、その間、審査員としてコメントをさせていただいたり、個々の作家の形と話をさせていただいたりする機会も多かった。作家性を年代で区切ることには矛盾があるかもしれないが、僕はこの世代、すなわち’90年代に青春を過ごした人たちにすごく、すごく興味がある(『ファウスト』を支持してるのも同じ理由)。

7月22日「プラチェキ!」

・プラチェの新作(単行本)を3冊、同時リリースする。その見本が続々と刷り上がってきた。ケータイとかネットとかゲームとか都市伝説とか女子高生とか渋谷とか、そういうことがなんとなく気になってる人なら、どれか一冊だけでも手に取ってみて下さい。

・小説版は『プラトニックチェーン03』(エンターブレイン・7/26発売)。ファミ通誌上で連載していたショートショート40本に手を加えたもの。

・コミック版は、遠野ヤマさん画による長編『プラトニックチェーン 第1巻』と、岡崎武士さん、緒方剛志さん、結賀さとるさん、naked apeさん他、全23名の作家さんによるアンソロジー『プラトニックチェーン セレクテッドストーリーズ』(ともにスクウェア-エニックス・7/27発売。今の、日本の、マンガって、本当にすごいと思う。たくさんの人に読んでもらいたいなあ。

・ところで渡辺登場の『フロムA』は7/26発売号でした。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。