第206回

3月23日「おこめ券ほしい」

・スクウェア・エニックス社出版部のパーティー。多くの作家さんとお会いできて感激(覆面作家さんが多いのでいろいろ書けない)。

・同社の各誌で活躍されているマンガ家さんはとても若い。そして編集者の方々も。大手出版社のパーティーでは「有名作家&取巻編集者」「無名作家&説教編集者」の2パターンばかり、という風景がとても多いが、ここは作家さんと編集者さんがフランクに友達のように雑談していてとても良い感じである。

・スクエニといえば3誌同時連載が始まるコミック版『ひぐらしのなく頃に』が、すごく楽しみ。こういう機動力も、若い会社の強みだ。あ、パーティー会場には原作者・竜騎士07さんもいらしてたらしいのだが、会えず。

・ヤングガンガン誌の中野編集長をめっけたので「読者プレゼントに”おこめ券”があるのはサブリミナル効果狙いか」など質問してみた。

3月24日「フルCG作品もあり」

・映画版『ZOO』観る。乙一氏の同名小説集から5作品の映像化(P・グリーナウェイの同名映画とは別もの……だけど全く関係ないこともなくて……いったん忘れてしまわないと話がややこしくなる)。

・整然として凄惨たる乙一ワールドが忠実に映像化されている。原作がいかに映像的だったかということの証明にもなっている。だからこそ、小説の読者だけに見せるのは惜しいと思う。乙一ファンは、友達連れて観に行こう。もちろんどの作品も暗黒だけど、デートでもOKなテイストになってるし。

・若いクリエーター、特に物語の作り手のレベルは今とても高い。ただしこれまでのところその才能が表出しているのはライトノベル、あるいはマンガやノベルゲームといった領域に偏っている。映画界に、そういう場所がなかったのだ。今後、こういう試みが加速していくことに期待。

3月25日「とるこ行きたい」

・集英社にて、jBOOKS野村氏と打ち合わせ。ネット上で展開しつつ単行本にまとめていく、というコンテンツ作りのスタイルについて、いろいろ勉強&企画。

・今jBOOKSサイトで連載されている「とるこ日記」(http://j-books.shueisha.co.jp/turkey/)が面白いという話をした。ら、作家の松原真琴氏がちょうど来社してる、とのことで、さっそく紹介してもらう。

・「とるこ日記」は、この人と乙一氏と定金伸治氏が、危険な西アジア地域をとぼとぼと進攻していく。その道中記が3人それぞれの視点から語られていくもの。3人とも極めて内省的なタイプの作家で、ちっとも楽しそうじゃないところが良い。

・ところで松原さんも『ZOO』を観て涙した、とのこと。そのほか寄生虫の話などで盛り上がる。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。