渡辺浩弐の日々是コージ中
第222回
7月15日「必要なコンテンツは」
・ドワンゴ社にて。ケータイ配信の新技術についていろいろレクチャーしてもらう。こういう技術はその仕組みではなくあくまでも具体的な「作品」として発表されていくべきものでしょうね。
・ケータイのようなデジタルのインフラ上に今後最もニーズが高まるものは、超ショートコンテンツだと僕は思っている。着メロや着ムービーの先にあるものは、ミニゲーム、デジタルマンガ、あるいは短編の映画・アニメの延長線上の何かだ。配信というスタイルにも、ケータイ端末の操作性や画面にも相性がよく、また多少のインタラクティブ性を喚起する。そういうものだろう。
7月19日「シムシティではない」
・新宿ミラノにて『シン・シティ』試写。監督はロバート・ロドリゲスに、原作コミックの作者フランク・ミラーが加わっている。さらにタランティーノが特別監督として1シーンをまるごと担当している。
・わけありの人々が吹きだまり独特のコミュニティを成している「シン・シティ」を舞台にした様々なストーリー。この映画ではそこから3つのエピソードが絡み合いながら進展する。無法者は愛した娼婦の仇を取るために、女達は美学を持って商売を続けるために、老刑事は少女への純愛を貫き通すために、殺して、殺して、殺しまくる。銃で、手榴弾で、斧で、拳で。手足をぶったぎり、頭蓋骨を爆破し、内臓を犬に喰らわせ。と終始、身も蓋もないバイオレンスだが、それらがとても美麗に、爽快に、妖艶に描かれる。肉体も血液も銃器も刃物も、モノクロームを基調とした画面の中に、実に丁寧にデザインされているからだ。
・全てのシーンがいちいち(クサいほどに)決まっているのも、画面の二次元的な構図が完成されているからだ。これも、デジタル技術を駆使して原作コミックを忠実に映像に起こした成果だろう。
・作家は、自分のイメージをできるだけリアルに映像化したかったら、まずはマンガにしてみるといいと思う。その段階の作業に時間と労力をかけるべきなのだ。完成したものはそれ自体を商品として世に問うこともできるし、映像化の際にはストーリーボードとして絵コンテとして、機能してくれるはずである。
7月21日「本体価格は『高いぞ(byくたたん)』」
・プレイステーション陣営関係者が一同に会するビジネス戦略発表会「PSミーティング」。
・携帯機「PSP」について。インターネットブラウザーが搭載される。また対応のUMDディスクは既にゲームソフトとほぼ同じ数、出荷されているらしい。この増産にさらに注力するという。つまりこのマシンについては、ウォークマンやiPODの延長のマーケットをきちんと押さえていくということだ。
・新ハード「プレイステーション3」について。各メーカーの作品(というか試作映像)が公開された。ゲーム(の音像)が激しく向上することは間違いない。人間の顔のような極めてアナログなものまで、実物と区別つかなくなるレベルである。しかしこれが制作の難易度を上げ、費用を高騰させ、間口を狭める……という当然予測される問題に対し、ソニーは先手を打った。
・凄まじく細密なバーチャル世界を全て人の手によって描き動かしていくのではなく、物理演算によって自動的に生成させていくという作り方の提示である。そのために万全のサポートをする、ということ。具体的には、リアルタイム物理演算シミュレーションツールと、シェーダープログラミングツールについて、有力ツールメーカー2社との提携、1社の買収を決定した。
・未来の夢物語については別の機会に語りたいと思うが、これから1年以内の大きな動きとしては僕は2つのことに大きな可能性(いや確実性)を感じている。PSPについては、UMDディスクを活用する配信ビジネスの構築。PS3については、フルデジタル映画製作プロセスとのコラボレーション。