第237回

10月28日「ヘルシーな街」

・私のいる某雑居ビルには既にコスプレショップが3軒メイド喫茶が2軒メイドゲーセンが1軒あるわけだが、今度はすぐ近所に”メイドヘルス”ができた。窓から見えてしまうので気が散って仕方がないのだがヘルスって、ヘルスセンターとかスーパー銭湯みたいなものか?

・ところで3階のメイドカフェは夜のみの営業で、普通のアイス屋さんが19時からいきなりメイド仕様に変身する。その直前に行けば「俺はアイスが食べたいだけなんだ……本当はメイドなんか興味ないんだ」という顔をしていられる。それから4階のメイドゲーセンは「俺はただメイドさんが見たいだけなんだ……こんなにマニアックな2Dゲームには本当は興味ないんだ」という顔をしていられる。

10月29日「親殺し子殺し」

・肉親による子供の虐待はよほどの事例になってはじめて表沙汰になるわけで、報道されているのは氷山の一角だろう。ひどい目に遭っている子供が、家族以外に助けを求めることは現実的には非常に困難なのだ。

・さらに、もしなんとか話す機会があったとしても、「実の親のことを尊敬しないなんて子は人間失格よ」とか「親がやることは、どんなにひどいと思うようなことでも実は愛情をもってやってるはず……あんたもいつか大人になったらわかるわよ」なんてことをしゃあしゃあというバカが世間には非常に多いのである。そういう奴らは虐待されて死んでいった子供達に対しても是非それを言ってほしい。

・子供が親の虐待に対抗するには相手を「殺す」しかないのだ。ならば全ての子供にはその権利を与えるべきではないか……という、小説を書いた。『殺して良い日』というタイトルで、ファウストにそのうち載ります。

11月6日「スクープのこつ」

・NHKの事例は非常にシンプルで、わかりやすい。生真面目な現場で生真面目な記者が壊れてしまったということだろう。ところが、これはブログ時代に爆発的に拡大再生産されかねない事例だということに皆、気づいているだろうか。

・メジャー放送にまでケータイのカメラ映像が使われるほど報道の視点がストリートレベルになると、放っておくとニュースを作りながらニュースを流すという自家発電が始まってしまう。例えばIT系の会社のスター経営者の方々はそういうことを巧妙にやっているわけである。火が燃え上がってから撮るのではなく、火を点けている自分を撮って流しているのだ。そういう企業が報道に進出する時、一般ブロガーからネタを買うという方法を採ることになる。

・その先のシミュレーションや対策は既にもう、遅いかもしれない。だから渡辺浩弐の小説を読んでおけばよかったのである。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。