第275回

8月28日「ネットの(が?)女神様」

・「Gファンタジー」誌の熊氏が、台湾版『プラトニックチェーン』のポスターを持参してくれた。アジア各地(台湾・香港・韓国)でよく売れているらしい。英語版はまだ出してないのにアメリカやフランスからの反応も来るようになった。YOUTUBEのおかげかな?

・プラトニックチェーンをグーグルの未来形として見ている感想メールを最近、たて続けにもらった。この作品について海外では、渋谷文化やモバイル文化以外の受け取られ方もされているようだ。

・あらゆる情報がネット上にアップロードされる社会では「万能検索システム」こそが神様になりえるのか、という問題である。これは今後10年間、全世界で真剣に語られるべきテーマである。

・超常的な存在としての神様を信じることはとても難しくなってしまった。そして生身の人間はどんなに偉くても神様になれないということも、わかってしまっている。世界一権力を持つ人間でも、時にはさげすみの対処になる時代なのである。

・しかし「神」がいない世界はおそろしい。おてんと様が見てくれてるからこそ、我々は悪事を慎み、善行に勤しむことができるのである。人類は、全ての情報を預かってくれる存在、全てを監視してくれる存在を、潜在的に熱望しているのだ。

・グーグルないしウェッブ2.0が光り輝く未来メディアとして語られる理由はここにあると思う。超常存在でなく、人間でなく、コンピュータを神にしてしまおう、というわけである。しかし、ちょっと待ってください。そんなに大切なことを、コンピュータに、機械に、預けて、任せてしまって、本当にいいんですかね?


8月31日「検索2.0」

・地震。その直後、RSSの検索エンジンを見て回った。様々な状況下で地震に遭遇した人達がどんどん情報を上げている。今はその状況をリアルタイムで鳥瞰し続けることができるのである。コンビニの崩れた棚の写真を上げる人もいれば、止まってる山手線の中から更新し続けている人もいる。メールとブログのおかげで、すごくたくさんの人々が発信を厭わないようになっているわけだ。

・先日ライブドア社でブログのシステムを組んでいる技術者の方から話を聞く機会があった。あらゆる人々のあらゆる居場所から刻一刻とデータがアップロードされるようになっている現状、RSSサーチが非常に重要になってきているということだった。RSSデータをどう検索するか、どう遊ぶか、そのアイデア一つでとんでもないことができそうだ。

・今、すごいことを思い付いたので早速、小説にしよう……いやその前に特許とっとくかな。

9月1日「1人1万ドル~ らしい」

・『HOSTEL』試写。「男が求める快楽が全て手に入る場所がある」そんな噂を追い求めてスロバキアの小さな街にたどり着いたバック・パッカー3人。期待通り、そこはドラッグとセックスの天国だった。が、……という展開。

・「自由」という御旗のもとで人間の快楽追求が暴走していく時、世界にどういうひずみが生まれていくか、という話である。ものすごくリアル。と思ったらタイの実話から着想して作りだしたものらしい。というか、イーライ・ロス監督は最初これをドキュメンタリー企画として進めていたそうなのだ。

・そういう場所があるとしたら、タランティーノ監督(当作品には”プレゼンター”として関わっている)や三池監督(一瞬だが印象的な役割で出演している)あたり既に病みつきになって全財産注ぎ込んでるような気がする。

2006.09.04 |  第271回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。