第297回

2月1日「博物館ブームの予感」

・『ナイトミュージアム』試写。恐竜の化石、野生動物の剥製、偉人の蝋人形、ファラオのミイラ、西部開拓時代のジオラマetc…全ての展示物が夜ごと生命を得て動き出す不思議な博物館の話。つまり最新VFXの展覧会をやりたかったのだろう。CGI担当はリズム&ヒューズ。CG専門誌はしばらくこの作品のメイキングで溢れそうだ。

・そこで右往左往する新米夜警をベン・スティーラーが演じる。超絶映像を駆使しつつ全体はどたばたのコメディーとしてまとめられている。80歳を越えた伝説的コメディアン、ディック・ヴァン・ダイクが軽やかにアクションをこなしていて、これもSFXかと疑ってしまうほどだ(俳優協会の意向でハリウッドではそういうことにSFXを使わないらしい……念のため)。

・世界のあらゆる時代あらゆる場所から一カ所に集められた展示物達は、目覚めると何をするかというと、すぐにいがみあい、戦争を始めるのである。夜警はそれをなんとかとりなし博物館に平和を取り戻そうとがんばるのだが、すぐに自分も戦いに巻き込まれ、ぼろぼろになってしまう。その繰り返しである。こういう場合、全員にとっての共通の敵が現れることが解決策になる(最近アメリカ映画を語るたびに同じようなことを書いてますが、もちろん、わざとです)。

・ところで若い人は博物館デートとかしないんだろうか。上野の科博はかなりおすすめだよ(=写真)。


2月2日「猪木との異種格闘技戦見たかった」

・70年代ウガンダの大統領アミンを描く『ラストキング・オブ・スコットランド』試写。クーデターを成功させ英雄に祭り上げられたアミンは70年代アフリカのスーパースターだった。抵抗勢力を大量虐殺しその人肉を食らい、欧米に刃向かい、しまいにはアントニオ猪木にまで戦いを挑んだことでも知られている。

・疑心暗鬼にとりつかれ暴走していくアミンの日常を、彼の主治医となったスコットランド男性の目線を設定することによってリアルに再現する。緊張感溢れるドキュメンタリー風の映像は、『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞したケヴィン・マクドナルドの力量と、そしてアミン役フォレスト・ウィテカーの熱演による。ロックを聴きながら『ディープ・スロート』を見ている孤独なアミンのシーンが特に良かった。

・「私はただの人間だ」「我々はただの人間だ」「お前もただの人間だ」そんなセリフが繰り返される。全ての人は一対一で話せばきっとイイ奴なのだろう。しかし全ての人は残虐になりある。憎しみは国家を生み出すが、しかし憎しみは国家を成り立たせはしない。

2月3日「おめでとうございます」

・作家の乙一さんの結婚披露宴に行った。外側は社交人なのに中身がひきこもり人間の僕は、外側ひきこもりのふりして中身はちゃんと社交人な乙さんがうらやましい。こんなに派手なパーティーの中心人物になっちまうなんてすごいよ。

・僕は隅っこに座ってずっと「知恵の輪」をやっていた。とても難しくて、なかなか解けない。そこに長身総髪の美少年が現れた。知恵の輪をさっと奪い取ると、一瞬のうちに外してみせた。なかなかの腕前と言うと、いやこれは拙者が考案したものである小学生の頃と答えた。お主いったい何者と聞くと、西尾維新だと答えて去った。

2007.02.12 |  第291回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。