第309回

5月2日「いきなり中国に」

・講談社BOXの太田克史編集長と、中国の浙江省・杭州市に。西湖で知られる古都/観光都市である。と同時に、昨今は上海や北京と競うように摩天楼の建築ラッシュが進む国際化都市でもある。

・朝、成田を出て、杭州まで直通便で3時間弱。昼前にホテルに着き、講談社北京の野田希代子さん、そして台湾からやって来た全力出版・林依俐社長と合流。林さんは同社発刊のマンガ+小説誌『月刊挑戦者』の編集長でもあり、中国でのマンガ、アニメ、ゲーム、ライトノベルの状況を、僕らとは別方向から視ている人である。

・ホテルのロビーでは大釜で名物の龍井(ロンジン)茶を煎っている。さっそく一杯頂きつつ、日本、中国、台湾の現状を報告しあう。それから市内の杭州国際会展中心(ワールドトレードセンター)という大ホールに移動。ここで「中国国際動漫節(アニメフェア)」というイベントが開催されているのだった。規模としては東京アニメフェアの倍くらい。中国最大のマンガ/アニメのイベントとして、今年第3回目を数えるものらしい。

・この時点で、まだ昼すぎ。中国って日帰りも無理ではない近さなのである。


5月3日「モー娘リンリンの故郷にて」

・引き続き、「中国国際動漫節」取材。それから市街も見て回る。書くまでもないことだが日本のマンガやアニメの海賊版商品がどこにも、大量に、溢れている。

・ただし、オリジナリティーが生まれていないわけではないのだ。その点についてこちらの若いクリエーター達と話をする機会がたくさんあり、考えるところが多かった。特に「80後」世代、つまり80年代生まれの若者が今とても面白い。中国語を話してはいるが僕らの中国に対する印象とは全く違う。中国ではマンガやアニメといったポップカルチャーが国家戦略の一端として推進されているが、政府の姿勢より、若い世代の動きを今ちゃんと捉えなくてはと思う。

・リンリンと並ぶ杭州名物は東坡肉(トンポーロー)(=写真)。脂身の分厚さにびびるが苦手な人はそこを食べなきゃいいのだ。


5月4日「華流コスプレがすごい」

・朝から取材。コスプレ大会の決勝戦と授賞式。こっちのコスプレイヤーはただ外見を作ってポーズを決めるだけではなく、歌や踊りや寸劇といったパフォーマンスを行なう。それも、本格的。京劇や雑伎のノウハウでアニメを現実化している感じである。

・今の中国では、マンガ、アニメ、ゲームといったポップカルチャーを表象するアイコンとしてコスプレが使われている。室内志向の強いオタク文化がここでは決してネクラなイメージに流れていない理由の一つだ。

・午後、市内の大手書店をめぐる。中高生くらいの若い人達が熱心に小説(表紙がマンガ絵の、日本でいうライトノベル系のもの)を立ち読みしている。いや立ってなくて、床にべったり座り込んで、ジュースなど飲みながら延々と読んでいる。2時間くらいして戻っても同じところで同じ人がまだ読んでる。

・取材の成果は改めてまとめる。『ファウスト』次号に間に合うかな?

2007.05.14 |  第301回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。