第366回

6月6日「和風のコーヒー?」

・KOBO CAFEの作家ブレンドは定金伸治先生のターン。定金先生からのオーダーは一言にまとめると「和風のコク」を出せないかというものだった。かつおだしを使ってみたりしながら四苦八苦して、やっとイメージに近いものが作れるようになったのが当日の明け方だった。

・定金先生は来年、講談社BOXで大河ノベルを、つまり12ヶ月連続書き下ろし刊行をやることになっていて、今はその準備中らしい。忙しい合間を縫ってカフェに駆けつけてきてくれた。しかもこの人のことを心配して乙一さんや松原真琴さんや、大河ノベル担当編集者のKさんもやって来た。開店前にみんなでわいわいと味の最終チューニング会議。同じ豆でも挽き方のわずかな違いなどで味が変わってしまうのである。

・特にKさんは味の僅かな違いをわかってくれるので作りがいがある。乙さんもマツバラさんも的確に意見を言ってくれるので、それに応じて微調整しては出し直す作業。10種類以上を淹れ分けて次々と飲んでもらって、遂に最終的な1種類を決定……したのは開店前1分。

・ただ、「1杯目と2杯目は確かに温度が違いますね。わかります」という発言で、もしかしたら定金さんご自身はちっともわかっていないのではないかという疑念が心に浮かんだ。今度来た時に試しにネスカフェを出してみよう。

6月7日「滝本店長と」

・KOBO CAFEで滝本竜彦さん「1日店長」デー。形式的なセレモニーだけでなく、本当にオーダーとったりコーヒー運んだり、一日中働いて下さった。1日警察署長のアイドルが実際に拳銃持って犯人捕まえに行くレベルである。

・さて最近の滝本さんはロシア式の筋力トレーニングで全身を鋼のごとくに鍛え上げている。このトレーニングを続けている間は、ひたすらジャガイモを食べ続けるのだそうだ。今日はそんな彼にちなんでロシア国旗をかたどった3色ポテト料理と、それからロシアの大地を模したシベリアケーキをメニューに入れた。

・やがて『エレGY』で「流水大賞」優秀賞を受賞した泉和良さんが来店。二人にミニトークショウをやってもらった。おなじみ太田編集長も乱入してくれて盛り上がり、15分の予定が1時間を超えるものに。

・そして夕刻、客数がやや落ち着いた頃を見計らって、今度は予告なしでいきなり、滝本さんによる筋力トレーニング教室を開催。お客さんも居合わせた作家の方々も席から出てきてもらって輪になり、ロシア式の腕立て伏せやスクワットを一緒にやる。滝本さんはビシっとモーニングで決めた執事ファッションのままで、汗一つかかずに全身を動かし続ける。みんなヒーヒー言ってる。すごい図である。僕もしまいには尻が攣った。

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6月8日「ピカピカの秋葉原で」

・秋葉原が、鬱屈したエネルギーを吸収する場所ではなく反射する場所になっていたことが大きな衝撃だった。

・騒ぐより考えたい。いろいろなことを。ネットに溢れ返る素材はそのためのものだと思いたい。

・警官は拳銃を抜いた。しかし犯人を撃たなかった。危険を冒し、生きたまま確保した。例えばその意味を考える。犯人を生きのびさせ、その肉声を聞き取ることの意味。それを重要なコンテンツとして社会で、個人で、消費する。そうして社会として、個人として、ネット時代の孤独と狂気の飼い慣らし方を考えることの意味。

2008.06.15 |  第361回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。