第382回

9月22日「VOFANさんと会う」

・前回の続き。台湾にて。全力出版のリン社長が、イラストレーターのVOFAN氏をセッティングしてくれた。『ファウスト』誌上での作品発表、そして西尾維新氏の『化物語』シリーズの挿絵などで、日本でも知られている作家だ。『化物語』のアニメ化が決定して、台湾人初の日本アニメ・キャラ原案者としてクレジットされることになった。

・リンさんと講談社BOX太田さんと、台北繁華街のメイドカフェでロングインタビュー。VOFANさんはTAGROさんに、人違いされそうなほどよく似ている。ただし非常に清純で、泉の底から女神様が持ってきた「きれいなTAGRO」という感じである。青春期にハマったゲームやマンガは、ほとんど日本から届いたものだったそうだ。ネットもない時代、台湾の地方都市に住み、そういう情報に渇望しつつ過ごした青春時代の話がすごく共感できた。詳細は、『ファウスト』に書く予定。

9月23日「台風は怖いけど」

・台湾を歩き回る。リンさんがコーヒーに詳しい人もセッティングして下さって、いろいろ話を伺うことができた。台湾でコーヒー農園とメイドカフェのオーナーになり、沖縄あたりに住んで、クルーザーで行ったりきたり……という老後に向けて、宝くじでも買ってみることにしよう。

10月2日「音学ではなく、音楽」

・「任天堂カンファレンス2008.秋」。DSiに新搭載されたカメラや音楽プレイヤーは、もちろん任天堂的に「遊ばせる」機能が充実しているが、それよりなによりブラウザーやSDメモリーカード・スロットが注目に値する。つまりDSをダウンロードやアップロードをがんがん行うネット端末に進化させる目論見が現れているのだ。そこに生まれる新しい遊びと新しいマーケットはとてつもなく巨大であるはずだ。

・ゲームとネットの世界を地続きにすることが、これから3年かけて任天堂が行なう仕事だろう。まずは、WiiとDSをなんとかネットに接続させなければならない。そのための施策をかなり本気で始めているようだ。例えばDS用の無線LANのスポット「nintendo zone」。現在のショップ店頭「DSステーション」の他に、例えばマクドナルドでもサービスが開始される。そういうところから、パソコンも使わないような人にもDSからインターネットに触れてもらうことができるかもしれない。

・それからWiiタイトル『Wiiミュージック』にとても衝撃を受けた。あらゆる楽器が、いきなり弾けてしまうソフトだ。実際に体験してみたが、技術や知識をマスターする苦労をすっとばして、音楽の「楽」の部分だけをいきなり享受しちゃえる感覚は、すごい。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。