第391回

11月29日「5年ぶり」

・中野ブロードウェイで緒方剛志さんとばったり。5年ぶりくらいかな。声優の奥様もごいっしょだ。イラストとかアニメの話ではなく、家庭菜園の話で盛り上がる。やっぱり農業ですねこれからは。

・次は2013年に会う約束。

11月30日「33年ぶり」

・映画『デス・レース』観る。近未来、民営化された刑務所は囚人カー・レースのオンデマンド放送によって収益を上げている。カルト映画『デスレース2000』(’75)のリメイクで、その製作者ロジャー・コーマンが今回も製作総指揮を担当。ロジャー・コーマンって120歳くらいかと思ったらまだ82歳らしい。

・前作は公道を走りながら一般人をひたすらひき殺していくというもので、そのハチャメチャな発想は今ならアメリカ産ゲーム『GTA』シリーズに受け継がれているわけだ。本作は映画版『バイオハザード』シリーズで知られるゲームオタク監督ポール・ W.S. アンダーソンがメガホンを取り、レースの基本設定は『GTA』というより『マリオカート』になっている。凶悪さや残虐さはあくまでも映画としての味付けに過ぎない。

・『デスレース2000』のナイスなアイデアをうまく取り込みつつ、理性の部分で楽しめるA級ハリウッド映画として仕上がっている。これほどのレベルの設定とシナリオを作り上げることができるアメリカは、そのノウハウを流用してGTAのようなゲームなら、作り出すことができる。しかし、マリオカートのようなゲームは、作れないわけだ。だからといって安心してちゃいけないのだが。

・ところで、F1のレーサーとか大相撲の力士って、どこまでマジにやってるんだろう。ほんとのほんとに全部ガチだったら、そのうち人間関係ぐちゃぐちゃになって、コース上や土俵上で殺し合いになったりするんじゃないか?

12月4日「5ヶ月ぶり」

・ニコニコ動画発表会『ニコニコ大会議2008冬』へ。会場にいても、やはり生放送してることの、つまり見てる人がリアルタイムで画面に書き込みしてるテレビとしてのインパクトが大きい。オンライン参加者は前回の倍、2万人になっていた。従来のテレビ放送とは違うので、数についてはこれくらいでもう十分だろう。

・新サービスとしては、コミュニティの機能を進化させた「ニコニコチャンネル」の思想をよく見つめたい。今後、テレビは高画質化には向かわない。だから地上波のデジタル化は失敗するだろう。ではどっちに行くかというと、細分化と利便化の方向なのである。ニコニコはそこ、テレビの進化する場所をいち早く占有しようとしているわけだ。

・「ニコニコチャンネル」はiモードのモデルだ。まずコンテンツを持つ企業 (なんとメジャーのテレビ局までも)がここにチャンネルを持ち、自社の映像をアップする。それがここでは二次使用とか再放送とは別の価値をもつわけである。そして企業やグループではなく個人も、プロフやブログの延長で映像チャンネルを持つようになる。映像が作れない人は他人の映像を引用してきてVJをやればいい。生放送だって、できちゃうのだ。

・そこで何やってくれんの、と待つんじゃなく、自分だったら何やる、と考えてみようよ。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。