元ロッキング・オン編集長・増井修「編集部6人で年間3億円稼いでいた」――ロック雑誌黄金期を振り返る
「増井修」と聞いて懐かしさを覚える人はどれくらいいるだろうか? 増井氏は、1990年から7年間『ロッキング・オン』の編集長を務め、熱のある文体で、ストーン・ローゼズやオアシス、ブラーなどの洋楽ロックを日本で盛り上げまくった仕掛人である。97年に突然、ロッキング・オン社を辞め、あれから20年……。「伝説の人」となりつつある今、なんの前触れもなく単行本『ロッキング・オン天国』を上梓した増井氏に話を聞いた。
――このたび、1990年から7年間のロッキング・オン編集長時代のエピソードを中心にまとめた単行本『ロッキング・オン天国』(イースト・プレス)を刊行されましたが、あれから20年経った今、どういった経緯でこの本を出されたのでしょうか?
増井:こんな企画本、まっぴらごめんだと思っていました。だけども、本を書いてくれという要請がことのほか大きくてですね、それは編集者のみならず、たまたま出くわした知り合いや、仕事関連の人からも、現在はすっかり偉くなってしまった往時の読者からも、偶然に言われたりしまして。多分、彼らは僕の衰弱を慮って、いま書いてもらわないと自分達の青春の正しい追憶本がなくなるとでも思ったんじゃないですか(笑)。でも、そうこうしているうちに、自分でもあの時がそれほど特別だったかな~という思いと同時に、自分でちゃんとあの時代を振り返ってみることで一区切りつけておこうという気分になっていったという感じですかね。ところが、この本ではそういった特別な時代、特別な自分、特別なロックなどというもんはなかったという趣旨がまずあって、それだからこそ書く気にもなったし、逆にそうであれば盛って行って構わないとも思いました。
――この本は当時のロッキング・オンの「熱」を思い出させてくれるような「増井節」全開です。
増井:そうですか? 増井節などと言われても、僕としては狙ったパーソナリティーでもなんでもなくてそのまんまで。熱血を演じようとした節は確かに当時はありましたが、単にサラリーマンのオーダーに従ったらそうなるべくしてなっただけで、今も熱血と言えば無意味にそうですし。少々扱いにくいほどのオネスティ―を武器にして世渡りしようという悪賢い魂胆は変わりません。先日も、20年ぶりくらいにサイン会なるものをやったんですが、その時に、本当にチャーミングな本でしたと言ってくれた人がいまして、そんな嬉しい反応はなかったんですが、その人、プロの編集者でした(笑)。むしろこっちがさすがと思ったくらいです。やっぱ最初から嘘は書けませんってことなんじゃないですか。
――単行本のオビに「むさぼり読んでいた!」とあるように、当時の『ロッキング・オン』は、まさに読者を巻き込んで、ひとつのうねりを作っていたように思います。
増井:ステュアート・コープランド(ポリスのドラマー)が6、7年前に来日した時に、80年代の日本人は中国人民服を着た群衆にしか思えなかった、と言ってるんですね。それが今や大変身したと。で、びっくりしたと。パンクとレゲエを混ぜ込んだ先端の野心家からしたら、椅子に座ったまま礼儀正しく拍手している観客はまさにそのようにだっさく見えたはずです。それが90年代に入ると様相が一変するわけです。当時の写真で興味深いのはそこなんです。オアシスのライブに来た女性客の手を差し伸べる闊達とした様とか、濃いめの化粧とか個性的なファッションとか、リアㇺを『馬鹿!』と言いつつも応援するような風情です。あそこには、畏敬と同時に、もはや対等になったという喜びが同居していて、なかなか無い時代性を感じさせます。その自然な流れに僕は同調拡大していたんだろうとは思いますよ。それまではロックは解釈や講釈のシロモノで、異文化吸収のツールでしたし、インテリとミーハーの武具だったのですが、時代が半歩先に結びつけたんじゃないでしょうか。
「こんな企画本、まっぴらごめんだ」と思っていた
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