命からがら日本に入国してきたクルド人たち。難民認定されず“仮放免”のまま…
’15年は6530万人もの難民が命の危険を訴え、世界をさまよった。一方、日本にも難を逃れ平穏に暮らす難民たちがいる一方で、制度を食い物にする“難民”たちも現れた。生死の境をさまよった末、辿り着いた国は楽園か?
JR京浜東北線の蕨駅東口から10分ほど歩いた県道沿いに、唐突にケバブ店が現れる。覗くと両サイドを刈り上げたジゴロ風ヘアスタイルの男性店員が、記者をテーブルに案内し、Vサインをしながら気さくに声をかけてきた。
「ケバブプレート、とてもおいしいですよ。辛さはどうしますか? 甘口、辛口できるし、駅の東口も西口もできます。中辛ですか? キスしちゃっていいですか~!」
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流れるようなオヤジギャグにキョトンとしてしまった記者に「中辛はチュウだからキスでしょ!!」とグイグイたたみかけるこの店の男たちこそ、蕨市界隈にその9割が集中するという在日クルド人だ。
ケバブ店といえばトルコの代名詞だが、彼らクルド人はトルコ、イラン、イラクなどにまたがる山岳地帯に住んでいる。合計すれば3000万人超の立派な人口を擁するが、居住地域が各国に分かれているため、どこの国においても少数派という弱い立場なのだ。
さきほどのハイテンションな店員とは打って変わって物静かな中年男性が、記者の隣のテーブルに座った。来日してまだ1年だという彼は、ゆっくりお茶を飲みながら言う。たどたどしい日本語だったが、大意は掴めた。
「トルコでは、学校や公共の場でクルド語を話すのは禁止されている。人さし指と中指を立てる『Vサイン』は、クルドの独立と自由を象徴するものだが、これを人前でやると当局に逮捕されてしまう」
トルコでは人口急増に雇用創出が追いつかず、失業率は高止まりしたまま。とりわけクルド人ともなると、まず仕事にありつけないという。人権侵害を受けて逃げてきた難民の顔と、仕事を探しに来た出稼ぎ外国人の顔が入り交じる口ぶりだった。
店内の壁には、クルド人に向けた仕事あっせんサイトの広告のほか、日本語教室の案内が貼ってあった。聞けば、トルコでの過酷な生活に耐えかねて来日したクルド人のために、地元の公民館を使って定期的に開かれているという。
日本に根を張る難民たち
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