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恋人に何度も首を絞められた男が知った真実の愛――爪切男のタクシー×ハンター【第十二話】

同棲を始めてからも、私に隠れてコソコソと唾を売っていたのだが、金銭的余裕ができてくるにつれて唾を売らなくなった。ようやくスタートラインに立てたかなと思った矢先、彼女が不眠症になった。 「唾を売らなくなったら鬱病と不眠症になった」 「本気で言ってる?」 「唾売ったら治るかも、唾売ってきてもいい?」 「気をつけていってらっしゃい」 治らなかった。 薬で治るものは薬で治すのが良い。お互いにその考えは一致していたので、かかりつけの医者から処方された薬で何とか日々を過ごすことになった。薬の副作用から彼女の体重は十五キロほど増加した。 「こんなに太っちゃってごめんね」 「俺も太ってるから見映え的にもちょうどいいんじゃないの」 「二人とも太ってたら恥ずかしくない?」 「プロレスのタッグチームみたいでカッコイイじゃない。鶴田・天龍組みたいでね」 「ほんと? でも私まだまだ太るかもよ?」 「もうちょっと太ったら女子プロのデビル雅美と同じ体重ぐらいでカッコイイね」 「……優しいね」 優しくはないだろう。
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三年程経ったある日
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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