ヘリテージ財団にいた横江公美が語る「日本人が今のアメリカを見誤る理由」
横江は、米大統領選についての著書で「野球帽はアメリカの白人のアイデンティティ」と、ユニークな指摘をしている。政治に特化した専門知識だけではなく、生活や文化に根差した視点があるから、彼女の指摘はリアリティを帯びるのだ。彼女は、大統領選でトランプが野球帽をかぶり、キャンペーンに利用していたことの本質的な意味を理解していた。
政治家を父に持つ横江は、多数の政治家を輩出する松下政経塾の出身だ。ところが、自身は政治家を目指さなかったようだ。
「子供の頃から、来客にお茶を出したり、来客の車が見えなくなるまで見送ったり、政治や選挙が身近でした。ただ、父親は弱い政治家だったので、厳しい現実を見てきた。政治家になることに甘い夢や希望を抱くことはありませんでしたね。一方で、選挙の勝敗以上に、なぜ人はこう思い、政治がこう動くのかに興味があった。私は、人間に興味があるんです」
政治アナリストとして横江が異色なのは、政治そのもの以上に人間の感情の機微に着目し、そこから政治を読み解くところだろう。
「政経塾では、海外で研究することを許してくれました。私は、現地に行ってみて『あれ?』って問題に気づくタイプ。そういう意味では、私は愚者ですね(苦笑)。本や歴史からは学べず、体験から『なぜなんだろう?』と考える。アカデミズムの世界では、まず理論なり仮説を立てて、現場でフィールドワークをするけど、私は逆。だから、“トランプ現象”のように、まだ理論が整わない状況で新しいことが起きると、私みたいなタイプは生きるのかもしれません。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶというけれど、今回に限っては“愚者的アプローチ”が役に立ったんでしょうね(苦笑)」
謙遜しているが、平時ではないときに働ける横江のような人材こそが、日本には必要なのだ。
※週刊SPA!上杉隆連載「革命前夜のトリスタたち」より
上杉隆(うえすぎ・たかし)●ミドルメディアカンパニー「NO BORDER」代表取締役。メディア・アナリスト。一般社団法人「日本ゴルフ改革会議」事務局長。『偽悪者 ~トリックスターが日本を変える~』(扶桑社)、新著『誰が「都政」を殺したか?』(SBクリエイティブ)が好評発売中。「ニューズ・オプエド」が好評放送中!
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