「ドラゴンゲートはプロレスを利用した“娯楽”」唯一無二のパワーファイター・鷹木信悟の信念とは【最強レスラー数珠つなぎvol.11】
――ドラゴンゲートに入団してから、挫折や苦労はありましたか。
鷹木:ここがキツかった、というのはないな。そのときは大変だったかもしれないけど、振り返ってみれば、なにを努力したとか苦労したとか、あんまりない。……ああ、団体内でのユニット編成みたいのが面倒くせえなと思って、アメリカに飛んじゃったというのはあるな。いま思うと心残りなのは、当時、デビュー1年半くらいだったから、せめて日本で3年くらいは基礎を学んでからアメリカに行きたかったかなと。そうしたらまた違った結果が出ていたと思う。
――アメリカ遠征はいかがでしたか。
鷹木:1年いたけど、大した活躍をした記憶はないな。テキサスに住んでいて、テキサスでベルトを3本くらい持ってたから、自分では「テキサス四天王だ」って勝手に言ってたけど。まあ、四天王って言っても、他の3人が誰か分からないけどね(笑)。
鷹木:そう言えば、ブッカー・Tっていう、当時WWEにいた選手がテキサスで道場をやっていて、トライアウトに行ったことがあった。スパーリングをしたら、終わった瞬間に拍手されて。「お前はいい。WWEのトライアウトも絶対受かる。でも英語を喋れないとWWEは通用しないから、俺が英語を教える。だからうちの道場に来い」って言われてね。でも俺はWWEに興味がなかったから、そのまま放置した(笑)。いま、うちにいた戸澤(陽)がWWEで活躍してるけど、「あのとき俺もWWEに行っていたら……」なんて全然思わないな。
――いまも、WWEに行きたいとは思わないですか。
鷹木:べつに思わないな。戸澤が生半可な試合をしてるんだったら、あいつの対戦相手になるぞ、くらいの気持ちはあるけど。あいつはアメリカ遠征から帰ってきたら、すごいアメリカかぶれしてて。海外に行くとみんな、かぶれるんだよ。新日本の内藤も、メキシコから帰ってきたらスペイン語ばっかり喋って。俺はああいうのが嫌いでね。まあ、戸澤とは同時期にデビューして、あいつの方がいま世間的には活躍しているように見えるけど、同じリングに上がったらいつでも負けないよっていう気持ちはある。
――鷹木選手は愛国心が強いですよね。ユニット名が「KAMIKAZE」「暁~AKATSUKI~」だったり、技の名前が「MADE IN JAPAN」だったり。
鷹木:アメリカ遠征中、腰に日の丸の旗を巻いて入場したりしてたんだけど。意外と現地の人の方が「大和魂」とか「武士道」とか、そういう言葉を使ってた。俺はそれまで日本のことをあまり知らなかったんだけど、帰国してちゃんと学んでみたら、こんなにいい伝統と文化があるんだったら、しっかり胸に刻んでいきたいなと思ったんだよね。
鷹木:愛国心という言葉に対して反応する人がいるかもしれないけど、自分の国が好きなのは当たり前のこと。郷土愛はみんな素晴らしいっていうのに、愛国心っていうとちょっと変わった奴だなと思われるのが、日本のヘンな空気だなと思う。言ってみれば、ドラゴンゲートに対する愛社精神と、プロレス界に対するプロレス愛みたいなもので。プロレスを通して、日本の伝統と文化を発信できたらいいなっていう感覚かな。
――日本についてどんなことを学ばれたんですか。
鷹木:新渡戸稲造の『武士道』を読んだり。あとは軍人五箇条とか。意外とそういったところにプロレスのヒントがあるんじゃないかと思う。侍も軍人も戦っているわけで、プロレスラーも同じ戦う者として、精神性というか、心理的なもので学べるところがあるんじゃないかなと。好きなんだよね、歴史の本とか。
――日本について学んだことによって、ご自身に変化はありましたか。
鷹木:靖国神社とか鹿児島の知覧でね、特攻隊の遺書を見たりしてたら、何事も受け入れる自分ができたというか。物事、なるようにしかならないから。プロレスをやってたら怪我もするし、もしかしたら命に関わることだってあるかもしれないけど、なるようにしかならないなという気持ちでリングに上がってる。腹くくって。
――小橋建太さんが、「鷹木選手はヘビー級だけど、他の団体にはないスピードや華がある」とおっしゃっていました。
鷹木:真っ向勝負なんだけど、真っ向勝負とはちょっと違った戦い方を出来るのが俺だと思う。ドラゴンゲートでは普通に動いているように見えても、他団体に出ると「動きが速い」となる。そういった意味では、いいスパイスになって掻き回せるかなと。体重がなきゃ、ヘビー級のチャンピオンになれないっていうわけじゃないだろうし。
鷹木:アメリカ遠征のとき、当時ROHのチャンピオンだった森嶋猛さんに挑戦したんだけど、最近その試合のDVDができたから見たんだよ。やっぱり俺はすごいギラギラしてて、「ヘビー級じゃないから……」っていうネガティブな感じは全くない。もう10年くらい前の映像だけど、その気持ちっていまも変わってないなと。普通にね、森嶋猛を担いでトップロープから投げたりしてたから(笑)。あんまりヘビーだ、ジュニアだって、分けたくない。無差別でいきたいね。
――いまはキャリアの中でどんな時期ですか。
鷹木:初めてプロレスラーになろうと志した14歳の鷹木少年がね、いつも試合会場に来ていて、「鷹木信悟、こんなもんじゃねえだろ」って言ってる気がするんだ。理想は高く持ってるつもりだから、そこに向けてどう行動していくかっていうことだな。
――どこまでいくのが理想?
鷹木:もっとパワフルに動けるようになりたいし、もっと体をゴツくしたいし、もっと技術を上げていきたい。あとはもっと世間にアピールできるようなことをやっていきたい。その一つとしてずっとやってきたのが、地元凱旋のときは必ず1000人以上集まるイベントにすること。地元ではカッコつけたかったから、知名度の高いゲストと試合をして、引けを取らないようにやってきた。過去に、曙さん、大仁田さん、小島聡さん、去年は関本(大介)、岡林(裕二)、今年は武藤敬司さんを呼んだんだけど、コラボすることによって、自分自身の価値を高めようというかね。もちろん知名度も高めようと思ってやってるし。
――鷹木選手から見て、ドラゴンゲートはどんな団体ですか。
鷹木:所属の人間がこう言うのもおかしいかもしれないけど、プロレスを利用した娯楽、っていう感じがする。GAORAとかでも「バトル・エンターテイメント」と言ってるし。あんまりプロレス、プロレスしていないというか。まずお客さんを楽しませようというのがあって、その中にプロレスがある。プロレスの中にドラゴンゲートがあるんじゃなくて、ドラゴンゲートっていう娯楽イベントの中にプロレスがある感じかな。
ただ、そこに異を唱えているのがVerserK(※鷹木がリーダーのユニット)で、「馴れ合いをやめて、また熱いプロレスをやろうぜ」っていう志を持った人間が集まっている。浜口道場に通ってた俺からしたら、レスラーが自ら「娯楽」と謳うのには抵抗があるし、プロレスの本質を忘れてるんじゃないかなと。まあ、どう捉えるかは、お客が決めることではあるんだけど。
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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■Fortune Dream 4
http://www.fortune-kk.com/pages/20170614.htm
【開催日】2017年6月14日(水)
【開場時間】17時30分
【開始時間】18時30分
【会場】後楽園ホール
■KOBE プロレスフェスティバル2017
http://www.gaora.co.jp/dragongate/release/tour.html
【開催日】2017年7月23日(日)
【開場時間】13時30分(予定)
【開始時間】15時00分
【会場】神戸ワールド記念ホール
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