更新日:2017年11月18日 00:10
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「ドラゴンゲートはプロレスを利用した“娯楽”」唯一無二のパワーファイター・鷹木信悟の信念とは【最強レスラー数珠つなぎvol.11】

――コスチュームや髪型が昔からほとんど変わりませんが、こだわりは? 鷹木:自分の気持ちがノってリングに上がれるかどうか。髪型、コスチューム、ガウンもそうだし、首飾りもそう。あのアイテムでリングに上がるから、鷹木信悟というレスラーが憑依する。本人なんだけど、違った自分が降りてくる感覚かな。 ――ツーショルダーのコスチュームにしている理由はなんですか。 鷹木:あれはね、単に俺が一番ゴツく見えるから(笑)。腕とかはわりとゴツゴツ筋肉をつけやすかったんだけど、背中とか胸とか、もちろん腹筋とか割れてるわけじゃないからね。まあ、そこまで深くこだわってはいないから、もし大きな出来事があれば生まれ変わることもあるかもしれない。そういうチャンスがあればね、全く考えてないわけじゃない。 ――フィニッシュ技の一つである「パンピングボンバー」の由来は? 鷹木:デビューして間もなく、「ラリアットを大事に使っていこう」と思ったとき、オリジナリティがあるほうがいいなと思って。そのときちょうど観たのが、『パンピング・アイアン』っていう、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のボディビルダーの映画でね。「パンピング・アイアンってカッコいいな。じゃあ、パンピングボンバーでいいや」みたいな(笑)。ボディビルも好きだから。 ――ボディビルをやられたり、トレーナー専門学校に通ったり、体作りへのこだわりもすごいです。 鷹木:小学校、中学校と太ってたから、カッコいい体に憧れたっていうのもあって。いまでもそういうのを求めて、ボディビルダーみたいに減量したいという気持ちと、レスラーとしてデカくありたいっていう葛藤でいつもぶつかってる。10年近く前、86kgくらいまで落としたんだけど、動きはべつに速くならないし、軽いと技に説得力がないのと、相手によく投げられる。だから無理に軽くしなくていいかなと思った。本当は100kg以上あってね、腹筋とか割りたいけど、なかなかね。まだ葛藤しながら模索中。 ――プロレスに限らず、こだわりや譲れないことはありますか。 鷹木:シューズにこっそり入れているイニシャルがあって。「GNO」っていう。意味としては、漢字にするとちょっと恥ずかしいけど、「義理、人情、恩返し」。義理っていうのは、プロレスラーとして、人として、正しい行いをすること。人情っていうのは、情け、思いやりを持つこと。恩返しっていうのは、一番難しいと思うけど、恩っていう字が好きで、“大きくなる心を囲む”っていうかね。逆に言ったら、俺自身に一番足りない部分でもある。忘れてしまうから身につけているような。 ――そういった考え方は、長渕剛さんの影響もありますか。 鷹木:それはあるね。アメリカ遠征中も、怪我で試合が出来なかったとき、長渕さんのDVDを観たりCDを聴いたり。子供の頃から長渕さんの歌を聴いて「よし、頑張ろう」と思ってたから、いまだにそれは変わらず。精神安定剤みたいな。すごく心に沁みる。 ――一番好きな曲はなんですか。 鷹木:最近好きなのは、『西新宿の親父の唄』。長渕さんに照らし合わせているのか分かんないけど、歌手を目指して「銭にならねえ」とか言ってる奴が、66の親父に「やるなら今しかねえ」って連呼される。その親父が死んじゃうんだよ。その曲を聴いて俺も、本当にやるならいましかねえなと。リング上でも言ったけど、いましか出来ないことを精一杯やりたい。いつも考えてるのは、14歳の鷹木少年が「こうなるだろう」と思った夢があって、その夢を実現出来ているかと言ったら、まだ出来ていないなと。 ――14歳の鷹木少年が思い描いていた夢とは? 鷹木:もっと活躍して、知名度もあってね。もっとテレビに露出したりね。もっと実力もあって、世界のどこでも通用するようなレスラーになること。そういう夢や野心を追いかけながらも、現実を見てどう解決していくかだな。 ――今後の目標は? 鷹木:ドラゴンゲートのファンって、ドラゴンゲートしか見ない人が多い。でもプロレスファンはもっといっぱいいる。新日本だったら東京ドームに3万人、4万人も集まるわけだから、そういう風にどんどん露出していけるように活躍するしかない。そのためには、負けを恐れず、挑戦していく必要がある。長渕さんの歌じゃないけど、やらない後悔よりは、やる後悔をしたい。環境を変えるっていうのは怖いことだけど、リスクがないとチャンスは掴めないから。  この前、武藤さんと試合をして、武藤さん、たぶん膝とか悪いと思うし、車いすに乗ってるときもあるって聞いたけど、そういう保障のない中でも、プロレスを愛するが故にリスクを背負ってやっているのを見て、考えるものがあった。武藤さんに対する尊敬の念も増したし、偉大だなあと思った。俺自身もプロレス界でそこまでになりたいというか、自分が行動することでプロレスが盛り上がるんだったら、なにかやりたいなと思う。 ――この連載では「強さとはなにか」を探っているのですが、強さとはなんだと思いますか。 鷹木:生き様を貫くことじゃないかな。普通とか、世間体とか、常識とか、誰が決めたんだ? って思う。いい意味で非常識でありたい。常識外れな人間っていう意味じゃなくて、常識を壊すっていう意味でね。生き様っていうのは、自分が正しいと思う信念。プロレスっていうのはこういうもんだ、とかね。 ――プロレスとは、どういうものですか。 鷹木:ひと言で言うと、戦い。それを見たお客が元気をもらったり、感動したり、「自分も現実と向き合って戦おう」って思えるようなね、そういうのを見せるものなんじゃないかなと。よく、「痛いのが好きなんですか?」って言われるんだけど、痛いのはすんごい嫌い(笑)。そうじゃなくて、プロレスが好きで、プロレスが唯一、自分の生き様を真に表現できる場所だから、俺たちはプロレスの上で生きている。 ――では、次の最強レスラーを指名していただけますか。 鷹木:同年デビューでいま頑張っている、ノアの中嶋勝彦選手を。’04年にデビューしたなかで、当時15歳だったのかな。デビューして1年くらいのとき、よくシングルマッチとかやってて。向こうも子供扱いされるのはイヤだったろうけど、こっちも「生意気なクソガキ!」と思って試合してた(笑)。それがいま、ああやって団体のチャンピオンになってね。俺が15歳でこの業界に入ってたら、あんなには突っ張れなかったと思うから、尊敬の念にはなってる。意志が強かったんだろうな。 ――ありがとうございました。  6月14日(水)、鷹木は小橋建太主催「Fortune Dream 4」に出場する。この大会、対戦カードがすごい。「潮崎豪、野村卓也vs岡林裕二、清宮海斗」「鈴木秀樹、石川修司vsジョー・ドーリング、ジェームス・ライディーン」……。鷹木は佐藤耕平と組んで、関本大介、諏訪魔組と対戦する。小橋はなぜ、鷹木にオファーをしたのか。小橋の事務所に問い合わせてみた。 「Fortune Dream 2に出場してもらったとき、相手の火野裕士選手、宮原健斗選手にパワー負けせず、スピードとパワーのバランスがとてもいいと感じたんです。ジュニア選手メインのドラゴンゲートの中で、100kg近いヘビーの体格ながら、他の選手にスピード負けしていないし、他団体では自分より大きい相手にパワー負けしていない。いい意味で男臭く、古風な鷹木選手の熱い闘いに期待しています」(小橋建太)  小橋は鷹木を高く評価している。そのことが、私はとても嬉しかった。自信に満ち溢れながらも、誤解されやすい人のように思えたから。  ところで、なぜドラゴンゲートは団体のTwitterアカウントを持たないのだろう。その理由を広報担当者に聞くと、「とくに意味はない」とのことだった。……いや、意味なくはないだろう。これだけたくさんのプロレス団体がTwitterに命を賭けているような時代に、敢えてアカウントを持たないことに、意味がないはずがない。  5月24日、宇都宮大会終了後、会場のお客さんに片っ端から声を掛けた。「Twitterでプロレスの情報収集をしていますか?」。するとほとんどの人が、「していない」と答えた。「じゃあ、どこでこの大会のことを知ったんですか?」と聞くと、「チラシ」「ポスター」「週プロ」。……そうか、だからか。後楽園ホールには、放っておいても人が集まる。後楽園ホールに来るお客さんは放っておいても来る。地方のお客さんはTwitterを見ない(チラシ、ポスター、週プロを見て来る)。故に、団体としてアカウントを持つ意味があまりないのだと思う。地方のお客さんは、Twitterを見ない。故に、団体としてアカウントを持つ必要性があまりないのだろう。  ドラゴンゲートは、ある意味、「鎖国」をしている。メディア露出もしないし、Twitterもやらない。他団体にも出場しない。一部の熱狂的“ドラゲー”ファンに向けて興行を行っている。その独自路線が成功しているのだから、それでいいのかもしれない。しかし鷹木信悟はそうは思っていない。ドラゴンゲートさえ良ければいいのではなく、プロレスというものを世間に広めたい――。「Fortune Dream 4」について鷹木は、「チャンスだと思う」と話した。鷹木ならきっと、チャンスをものにしてくれるだろう。  14歳の鷹木少年の夢が叶うことを、願ってやまない。 【PROFILE】鷹木信悟(たかぎしんご) DRAGON GATE所属。’82年11月21日、山梨県中央市生まれ。中学では野球部、高校では柔道部に所属。高校卒業後、アニマル浜口レスリング道場に通いながら、体づくりを学ぶためトレーナー専門学校に進学。ボディビルの大会にも出場し、優勝を果たす。浜口道場で3年間を過ごした後、2004年、DRAGON GATEに入門。2006年5月から単身アメリカ修行をし、2007年4月、日本マットに復帰。2008年、25歳の若さでドリームゲート王者に輝く。その後、4度ベルトを戴冠(過去最多)。現在はDRAGON GATEのみならず、他団体にも多数出場している。178cm、96kg。Twitter:@Takagi__Shingo <取材・文/尾崎ムギ子 撮影/安井信介>
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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■Fortune Dream 4
http://www.fortune-kk.com/pages/20170614.htm
【開催日】2017年6月14日(水)
【開場時間】17時30分
【開始時間】18時30分
【会場】後楽園ホール

■KOBE プロレスフェスティバル2017
http://www.gaora.co.jp/dragongate/release/tour.html
【開催日】2017年7月23日(日)
【開場時間】13時30分(予定)
【開始時間】15時00分
【会場】神戸ワールド記念ホール
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