「もっと重い病気にしろ」と医師を脅迫…障害者年金の不正受給者たち
「障害年金の不正受給に悩まされているので、話を聞いてほしい」
そう本誌SPA!に打ち明けたのは、現役精神科医・榎本庄司氏(仮名)だ。榎本氏によれば、精神障害を訴え、年金を不正受給しようとする患者は後を絶たないという。
「介護保険のように行政が患者と直接面談するわけでもなく、障害年金は医師の診断書と書類だけで受給できる。十分仕事ができるのに、ありのままに診断書を書くと怒鳴り込んでくる患者や、カネを包んで買収しにくる患者もいて、無法地帯と化しているんです」
障害年金制度は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類。厚労省年金局によれば、’15年の月平均受給額は基礎年金が7万2835円、厚生年金が10万2630円。症状の重さによって支給額は増減するが、かなりの金額だ。
「精神障害で年金申請をするには、初診日から約1年半の受診歴が必要です。しかし、実際には3か月に一度しか来ないような患者も多い。本当に薬を飲んでいるのか確かめるすべもないですし、こちらは相手を信用して、会話の内容から診断するしかないんです」
精神病の診断は、基本的にICD10という基準に基づいておこなわれる。統合失調症だけでも単純型、妄想型、緊張型……と病名は10種類近くあり、医者は問診をしながらどれに該当するか振りわける。しかし、問診の回数は明確に決まっているわけではなく、榎本氏は「ろくに通院せず、1年半経つと同時に年金申請用の診断書を求めてくる患者も多い」と語る。
「年金申請に必要な精神障害の診断書には『日常生活状況』という項目があります。5段階あるうち、症状が重い4~5番に丸がつけば、ほぼ間違いなく年金を受給できる。患者は診察書を見ることができるので、正直に1~3番に丸をつけると、『もっと重い症状に丸をしろ!』とゴネてくるんです」
だが、この基準で4~5番に相当するのは家から出るのも難しいような状態だ。
「延々と何時間も交渉したり、家族を連れて怒鳴り込んでくるような患者は、その時点で4~5番には当てはまらないわけです。しかし、脅迫まがいの罵声を浴びせられ、仕事にならないので、こちらも結局は諦めてしまう。僕の場合、患者の3割はそんな連中です」
榎本氏が「3割」と言うように、すべの患者がそのような悪質な患者ではないのは言うまでもないが、しかし、高い割合であることは間違いない。こうした不正受給の現状を厚生労働省どの程度把握しているのだろう? 担当者に問い合わせてみた。
「厚生労働省では直接把握しておりませんが、日本年金機構には一定数、第三者からの情報が寄せられています。情報提供者の身元が明らかで、調査対象者が特定できる場合には、事案を記録のうえ、調査の実施を検討することとしています。 しかしながら、実態としては、情報提供者の身元が明らかでない場合が多く、取り扱いの変更を検討しています」
医師への圧力に関しては「実態を把握しつつ、検討していきたい」とのことだ。
真面目な医師や本当に助けを必要としている障害者が泣きを見ないような制度の実現が求められている。
取材・文/週刊SPA!編集部
※10/3発売の週刊SPA!「精神科医が告発する![障害者年金]不正受給のカラクリ」特集より
「介護保険のように行政が患者と直接面談するわけでもなく、障害年金は医師の診断書と書類だけで受給できる。十分仕事ができるのに、ありのままに診断書を書くと怒鳴り込んでくる患者や、カネを包んで買収しにくる患者もいて、無法地帯と化しているんです」
障害年金制度は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類。厚労省年金局によれば、’15年の月平均受給額は基礎年金が7万2835円、厚生年金が10万2630円。症状の重さによって支給額は増減するが、かなりの金額だ。
「精神障害で年金申請をするには、初診日から約1年半の受診歴が必要です。しかし、実際には3か月に一度しか来ないような患者も多い。本当に薬を飲んでいるのか確かめるすべもないですし、こちらは相手を信用して、会話の内容から診断するしかないんです」
精神病の診断は、基本的にICD10という基準に基づいておこなわれる。統合失調症だけでも単純型、妄想型、緊張型……と病名は10種類近くあり、医者は問診をしながらどれに該当するか振りわける。しかし、問診の回数は明確に決まっているわけではなく、榎本氏は「ろくに通院せず、1年半経つと同時に年金申請用の診断書を求めてくる患者も多い」と語る。
「年金申請に必要な精神障害の診断書には『日常生活状況』という項目があります。5段階あるうち、症状が重い4~5番に丸がつけば、ほぼ間違いなく年金を受給できる。患者は診察書を見ることができるので、正直に1~3番に丸をつけると、『もっと重い症状に丸をしろ!』とゴネてくるんです」
だが、この基準で4~5番に相当するのは家から出るのも難しいような状態だ。
「延々と何時間も交渉したり、家族を連れて怒鳴り込んでくるような患者は、その時点で4~5番には当てはまらないわけです。しかし、脅迫まがいの罵声を浴びせられ、仕事にならないので、こちらも結局は諦めてしまう。僕の場合、患者の3割はそんな連中です」
榎本氏が「3割」と言うように、すべの患者がそのような悪質な患者ではないのは言うまでもないが、しかし、高い割合であることは間違いない。こうした不正受給の現状を厚生労働省どの程度把握しているのだろう? 担当者に問い合わせてみた。
「厚生労働省では直接把握しておりませんが、日本年金機構には一定数、第三者からの情報が寄せられています。情報提供者の身元が明らかで、調査対象者が特定できる場合には、事案を記録のうえ、調査の実施を検討することとしています。 しかしながら、実態としては、情報提供者の身元が明らかでない場合が多く、取り扱いの変更を検討しています」
医師への圧力に関しては「実態を把握しつつ、検討していきたい」とのことだ。
真面目な医師や本当に助けを必要としている障害者が泣きを見ないような制度の実現が求められている。
取材・文/週刊SPA!編集部
※10/3発売の週刊SPA!「精神科医が告発する![障害者年金]不正受給のカラクリ」特集より
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