更新日:2022年10月24日 00:41
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X JAPANが世界に認めさせたメイド・イン・ジャパンの音楽文化“ヴィジュアル系”とアニソンの深~い歴史【山野車輪】

アニメのバンドのモデルだったNOVELA

 NOVELAに女性ファンが多かったのは、ミニ・アルバム『青の肖像』(1981年)のジャケットを、少女マンガ家の内田善美が手がけていたり、山田ミネコ作のマンガ『最終戦争伝説』のイメージ・アルバム『最終戦争伝説』(1983年)を手掛けたりなど、少女マンガと近しいところで活動していたことによるものだろう。

山田ミネコ作のマンガ『最終戦争伝説』のイメージ・アルバム、NOVELA『最終戦争伝説』(1983年)

 またNOVELAは、1983~84年に放映されたTVアニメ『愛してナイト』の主人公の彼氏のバンド「ビーハイヴ」のモデルだったし、特撮TVドラマ『ぼくら野球探偵団』の主題歌も任されていた。  V系のルーツであるNOVELAは、オタク・シーンと非常に近いところで活躍していたのである。

X JAPAN以降に登場したバンドの多様な音楽性

 1989年2月、一世を風靡したバンドのオーディション番組『三宅裕司のいかすバンド天国(イカ天)』の放送が開始され、ここからAURAやRABBIT、人間椅子ほか多くのバンドがメジャー・デビューし、イカ天ブームが起こった。  Xはアルバム『BLUE BLOOD』(1989年)でメジャー・デビューを果たした。『イカ天』放送開始から2カ月後のことだった。Xは関東インディーズ・メタル・シーンから這い上がってきたバンドで、IRONMAIDEN~HELLOWEEN系譜の音楽性が核となっている。だが、彼らの音楽には、へヴィメタルだけに留まらず、ハードコアやLAメタル、民族音楽、クラシックなどさまざまな要素が内包されていた。

X(X JAPAN)のメジャー・デビューアルバム『BLUE BLOOD』(1989年)

 X以降、YOSHIKIが設立したインディーズレーベル「Extasy Records」から、LADIESROOMやZI:KILL、LUNA SEA、TOKYO YANKEES、GLAYなどの後続バンド群が続々と登場し、Extasy Records以外からも若いバンドが続々とデビューした。

Extasy RecordsからLUNA SEAによるセルフプロデュースでリリースされた『LUNA SEA』

 後続バンド群の音楽性は、ゴシック・ロックや北関東ロック、ポジティブパンクなどからの影響が色濃く、やはりヘヴィメタルの枠内には収まっていなかった。というより、メタル色が濃いバンドはむしろ少なかった。Xの音楽性の核となっている正統派ヘヴィメタルや歌謡メタル的な部分は、後継のV系バンドには必ずしも継承されなかったと言っていいだろう。
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ラルクにGLAY にZI:KILL……V系バンドによるアニソン
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

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