更新日:2022年10月24日 00:56
ライフ

「吐いてでも給食を食べさせる」熱心な教育の恐ろしさ

指導することと指導を徹底することは違う

 僕は肉の脂身が苦手です。牛肉はまだなんとかなりますが、豚肉はまったくダメです。小学校の時、給食で豚肉の料理がでた時は、本当に地獄でした。  給食用の安い豚肉だからか、いつも脂身がたっぷりありました。もちろん、小学校時代の先生は、給食を残すことを許してくれませんでした。  僕はまず、豚肉の脂身だけを残して給食を食べ終えました。そして、残った脂身を小さくスプーンで切り、一切れずつ口に含み、牛乳で一気に飲み込みました。  苦行のような時間でした。  あまりに多い時は、一気に口に含んでそのままトイレに直行しました。  今でも、その瞬間を覚えているのですが、トイレに行く途中、豚肉の脂身の臭いに我慢できなくなって、側溝に一気に吐いたことがあります。  汚い話で申し訳ないのですが、ぶわっとまき散らすように吐き出しました。本当に泣きたい気持ちでした。  たぶん、偏食をなくすために「給食は残さない。完食する」と指導されていたのでしょう。無理に食えば、偏食はなくなるという理論は誰が決めたのでしょうか。そういう理論を提出した人がいたら、会ってみたいものです。  僕はいまだに、豚肉の脂身が食べられず、でも、肩こりは激しいですが、すこぶる健康に生活しています。  その後、「三角食べ」という、主食(パンやごはん)、おかず、牛乳という三種類をまるで三角形をなぞるように順番に食べる食べ方を指導され、「何をどの順番で食べるぐらい自由にさせろ!」と小学生ながらものすごく憤慨しました。  ツイッターで、この悲しいニュースをつぶやいたら「食育は大切です」とか「最近の女子小学生はごはんを残すのです。ご存知ないのですか?」とか、いろいろツイートが返ってきました。  偏食をなくそうと「指導すること」と、「指導を徹底すること」は全然違います。 「あなたの健康を考えてあなたのためにやっているのです」という「正義と善意」を進めることと、徹底することは全然違います。 「熱心な教育」「完全な善意」「徹底した指導」は、目の前の人間が苦しんで吐くことを無視できるのです。  感じなくなるのです。それはなんと恐ろしいことなのでしょう。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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