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「試合に勝った方が強い」伝説のキックボクサー藤原敏男の勝負論<最強レスラー数珠つなぎvol.14>

――藤原先生がキックボクシングを始めたきっかけはなんですか。 藤原:遊びで目白ジムに入ったの。高校までテニスやってたから、ちょっと汗を流しに行こうかなと思って。それが大きな誤りだったんだけど(笑)。 ――子供の頃から、空手などをやっていたのかと思いました。 藤原:いまの子供は、3、4歳から空手とかいろんなことをやってるけど、当時はキックなんてないからね。俺はなにもやってないよ。岩手の田舎で、テニスと、石川啄木の歌と、宮沢賢治の詩を眺めて生きてきた。夏になると海で魚とかアワビを釣って、秋になるとクルミだとかブドウだとか採ってきて、10月からは鉄砲の弾作り。冬は猟が始まる。それで生活してたの。反射神経とか動体視力は、子供の頃から自然を相手にしてきたのが生きてるのかもね。 ――鉄砲の弾作り? 藤原:マタギだね。キジがばたばたと飛んでるから、狩りをするんだよ。小学校2年生のときから銃を撃ってたよ。免許はないけど。 ――時効ですかね(笑)。どんな子供でした? 藤原:大人しい子供だったよ。喧嘩もあんまりしたことない。弱虫の意気地なしだったから。俺がキックを始めて、同級生はみんな「なんであの大人しい藤原君が、格闘技なんかやってるんだ?」って驚いたよ。子供の頃は、強さへの憧れなんてなにもない。20歳でキックジムに入ってから、この先生と一緒にいれば少しは強くなれるかなと思ったの。 ――21歳でデビューして、31歳でラジャダムナン王者になりました。 藤原:キックを始めた以上は、国技ムエタイのトップになりたかった。それが自分の最終目標だったから、ノンタイトル戦でもタイの王者に勝ったら辞めようと思ったことが何回もあったよ。チャンピオンになったら今度はアメリカのマーシャルアーツのトップ選手が来て、「最後に闘うのはお前だろ」って辞めさせてもらえなかった。34歳のときに1000万円トーナメントがあって、準決勝で勝ったんだけど、俺はそこで辞めたの。 ――1000万円貰えたかもしれないのに? 藤原:金じゃなくて、体力の限界を感じたし、お客さんに格闘技の真髄を見せることもできなくなってきたから。カッコいいんですよ(笑)。 ――1983年に引退して、1997年に「藤原スポーツジム」を設立されるまでの間はなにをされていたんですか。 藤原:プロゴルファーになろうと思ったの。ゴルフ場の支配人をやってね。キックみたいな痛いもんはやりたくないから(笑)。茨城と栃木の2か所で、総支配人を10年間やった。 ――そんなにゴルフがお好きなんですね。 藤原:明後日もゴルフだから、明日は朝から練習なんだよ。「スコアなんて関係なく、楽しくやろうよ」って言われるけど、スコアで負けると頭くるから。格闘技でも、試合が決まれば闘いの始まりだからね。佐山先生もいま、プロゴルファーについて練習してるよ。お互い、徹底的にのめり込むタイプだから。 ――最近立ち上げられた「マーシャルアーツオンラインクラス」は、どういうものでしょうか。 藤原:一流の格闘家による“俺流”のテクニックを、インターネットで学べるクラスですよ。動画サイトを見ても、細かい技は分からないじゃない? このクラスはスローモーション動画もあるから、細かいところまで学べる。足や手の角度がどうとか。グレイシー柔術が、アメリカでやってるらしいんだよ。自分たちの技術を世界中の人に広めてるんだよね。 ――どんな人に向けたクラスですか? 藤原:アマチュアの同好会なんかをやってる人たちは、参考になるんじゃないかな。とくに地方に住んでいる人はいいと思う。東京じゃないと、なかなか一流のテクニックを学べないから。あとはキックを始めたばかりの人にも見てもらいたい。ワンツーとかジャブとか、基礎的な動画もたくさんあるんだよ。 ――選手が引退後、収入を得るためでもあるとか。 藤原:いま、ほかに仕事を持ちながらキックをやってる人が大半だからね。K-1とかはわからないけど。そういった選手たちのサイドビジネスになるといいなと思う。 ――“俺流”というのは大事ですか? 藤原:人によって体型も考え方も違うし、自分のスタイルは絶対持ちたいと思うしね。個性のあるファイトをするには、オリジナリティが必要になってくる。ローキックで倒れるという場合でも、自分はパンチでいきたい場合もあるし。「そういうやり方もあるのか」ってピンと来ると思うんだ。例えば、下がるのも戦略の一つだとか。格闘技は前に出ることも大切だけど、下がることも戦略なんだよ。 ――キックボクシングにおいて、一番大切なことはなんですか。 藤原:相手のコンピューターを壊すことだね。リングに上がった瞬間に、まず相手を狂わせる。いくと見せかけていかない、いかないと見せかけていく。そうすると相手は迷うから、自分のペースで楽に試合ができる。それが俺のやり方なの。  あとはイメージトレーニング。朝昼晩、練習して、夜、布団に入るとき、頭の中で自分が最高にカッコいい勝ち方をするイメージトレーニングをする。酒飲んでてもなにしてても、そういうイメージが浮かんでこなきゃダメだと思う。街角で敵が四方八方から来たら、どうやって自分の身を守るかとかね。道場だけが練習の場じゃないから。 ――イメージ通りにいくものですか? 藤原:考えることが大事なんだよ。「そんなこと、まさかできないでしょ」って思われるようなことでも、やる前から諦めるのはダメ。やってみなきゃ分からない。イメージしたものに対して、0.1でも0.2でも近づけるような努力をすること。正面から蹴ったり殴ったりするのは、だれでもできる。変則的な動きができるっていうのは、イメージトレーニングをしているからなんだよ。
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キックを八百長だと言ってる人には、ふざけんなって怒る
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公式サイト:https://martialarts-onlineclass.com/

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=IrB0gl5SvNM

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