更新日:2022年11月29日 11:57
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昭和、平成…元号は独自の文化・伝統をもつ独立国家のシンボルである

日本は、キリスト教国家でも、イスラム教や仏教を国教とする国でもない

 この元号はまた、日本が独自の文化・伝統をもった国であることも示している。 今年は西暦2018年だが、西暦とはキリスト教歴のことだ。キリストの降臨(生誕)とともにこの世界が始まったという歴史観に立脚しているわけだ。この西暦が世界的に使われているのは、イギリスやアメリカというキリスト教国家が近代の国際社会を主導してきたからだ。  この西暦に対抗して非キリスト教国家は、独自の暦を使っている。例えば、エジプトやサウジアラビアといったイスラム教国家は、西暦622年を紀元一年とする回教(イスラム)歴を使っている。  一方、ユダヤ教徒とイスラエルは、ユダヤ歴を使っている。アダムとイブとを神様が創った時から始まっていて、西暦に3760年を足した年数となっている。  このほか仏教国では仏歴を使っている。ミャンマーやスリランカでは、釈迦が入滅したその年の紀元前544年を仏滅紀元元年としている。一方で、タイ、カンボジア、ラオスでは、釈迦が入滅した翌年の紀元前543年を仏滅紀元元年としている。よって西暦に544、あるいは543を加えた値が仏歴となる。  このほか、独立や革命、国王の在位を起点とする独自の暦を持つ国も多くあるが、その歴史は必ずしも古くない。  そうした世界各国の中で日本は1400年近くも前から元号という独自の時間感覚を持ち続けてきたわけだ。仮に日本が中国の属国になっていたら、あるいは明治以降、欧米の植民地になっていたら、元号という制度はなくなっていたに違いない。  キリスト教国家でもなく、ユダヤ教やイスラム教、そして仏教を国教とする国でもない。日本は、天皇を仰ぎ、独自の文化と伝統を有する独立国家であることを示しているのが、元号なのだ。大切にしていきたいものである。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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